【9月7日 AFP】シュモクザメ科に属する小型種のウチワシュモクザメ(学名:Sphyrna tiburo)は長い間、完全な肉食動物と考えられていた。たまに植物を口に入れることがあっても、単なる偶然にすぎないとみられていた。

 だが、それは誤りだとする研究論文が5日、英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。ウチワシュモクザメは雑食性で、海草の摂取が栄養面で重要な役割を担っているのだという。

 研究者らの間では、ウチワシュモクザメが大量の海草を摂取することが以前より知られていたが、海草からは何の栄養も吸収していないと考えられていた。

 論文の共同執筆者で、米カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の生態学と進化生物学の専門家のサマンサ・レイ(Samantha Leigh)氏は「海草の摂取についてはこれまで、サメが藻場に生息するカニなどの餌を探し回っている際に偶然起こることだと大半の人々が考えていた」と話す。

 だが、レイ氏と研究チームは今回、ウチワシュモクザメが好んで捕食する甲殻類や軟体動物とともに海草を常食としており、海草が最大で常食の62%を占める可能性があることを明らかにした。

 論文は「ウチワシュモクザメは大量の海草を摂取しているだけでなく、実際に海草を消化して栄養を吸収する能力を持つことから、雑食性であることは明らか」と指摘。「雑食性の消化戦略を取ることが示されたサメは、この種が初めてだ」と説明している。

 研究チームは3週間にわたり実施した一連の室内実験で、ウチワシュモクザメに海草9割イカ1割の比率の餌を与えた。その後、ウチワシュモクザメがどのくらいの量の栄養素を消化吸収し、どのくらいの量を排出したかを分析した。

 肉食動物のすべてが植物性物質を効率的に消化できるわけではないが、海草が豊富な餌を与えたサメはすべて体重が増加したことを、研究チームは発見した。

 実験の結果、ウチワシュモクザメは幼体のアオウミガメと同じくらい効率的に食物繊維や生物由来物質を消化できることが分かった。アオウミガメは幼体の間は雑食性で、成体になると完全な草食に変化する。


■「本当に驚くべきこと」

 この結果は「まったくの予想外だ」と、レイ氏は表現した。

「ウチワシュモクザメの消化器系は他の厳格な肉食性の近縁種と非常によく似ているので、まるで雑食動物のように振る舞っているという事実は本当に驚くべきことだ」と、レイ氏は述べた。

 海水や汽水(淡水と海水が混じり合った水)中で生育する海草藻場は、地球上で最も広く分布する沿岸生態系だ。藻場は水をろ過したり、大気中の過剰な二酸化炭素(CO2)を吸収したりする助けになる。また、数千種に及ぶ魚や無脊椎動物の生息地や稚魚の生育地を提供する。

 これらはウチワシュモクザメ自体の常食の大部分を占める。研究チームによると、ウチワシュモクザメは消化の助けになる可能性のある酸性度の高い胃を持っているという。

■生態学的意味

 米国のメキシコ湾(Gulf of Mexico)と大西洋(Atlantic Ocean)側の海域に生息するウチワシュモクザメは490万匹に上ると推定されているため、今回の結果は海草藻場の管理と保護に示唆を与えるものだ。ウチワシュモクザメが栄養素の再配分で担う役割は、これまで過小評価されていた可能性がある。

 サメの祖先に関する証拠はどれも厳格な肉食性だったことを示しているため、ウチワシュモクザメが草食を始めた時期については不明という。だが、今回の結果は他にも草食のサメが存在する「可能性がある」ことを示唆していると、レイ氏は話した。(c)AFP/Hazel WARD

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