■動画
This Is Only the Second Mammal Known to Seek Out Spicy Food | Nat Geo Wild
https://youtu.be/e51qLp_cJXM

■人間の他に辛みを好むもう1つの哺乳類、謎を解明

あなたは中国のツパイと同じくらいトウガラシを食べられるだろうか? 
おそらく無理だろうが、最新の研究によれば、知られている限り、わざわざ辛いものを食べる哺乳類は人間とツパイだけだという。

 中国の研究チームは、中国南東部の熱帯雨林に暮らすツパイにおいて、
トウガラシの辛み成分であるカプサイシンの感受性が低くなっていることを発見し、
7月17日付けの学術誌「PLOS Biology」で発表した。

 論文によれば、ツパイでは感覚神経にある「TRPV1(トリップ・ブイワン)」というカプサイシンの受容体が変異していた。
TRPV1は哺乳類の舌や喉にあり、酸や熱、カプサイシンを感知すると、痛みとして脳に警告を発する。

 ところがこの変異のおかげで、ツパイは辛いものを食べてもあまり痛みを感じない。

■たった1つのアミノ酸のおかげ

 中国科学院大学のヤラン・ハン氏と同僚らは、ツパイが辛い植物を好んで食べることを知っていた。

 ハン氏らは今回の研究で、野生のツパイ5匹と比較対照群として野生のシナシロハラネズミを6匹捕まえ、
現地の植物園で栽培されているPiper boehmeriaefoliumも用意した。カプサイシン類を多く含むコショウの仲間だ。

 次に、痛みに対する反応を測定するため、ツパイとネズミにP. boehmeriaefoliumから得られたカプサイシンを注射した。
注射した部位をどれくらいなめるかを観察したところ、当然ながら、ネズミたちはツパイよりよくなめた。

 さらにツパイとネズミの違いを調べた結果、たった1つのアミノ酸が異なるおかげで、ツパイは激痛を感じることなく辛いものを食べられることが明らかになった。(参考記事:「痛みと睡眠の不思議な関係が明らかに」)

■食事のバラエティーを増やして生き残る
 ハン氏らは、ツパイがトウガラシを食べられるのも、同じ変異のおかげだと考えている。

 多くの植物は動物に食べられないよう、進化によって辛み成分を獲得した。
しかし、ツパイはその上を行く進化を遂げたようだ。

 ハン氏は論文の中で、次のように説明している。
「この遺伝子変異は進化の過程で起きた適応であり、ツパイは食事のバラエティーを増やし、
生存率を高めるため、カプサイシン類への耐性を獲得したのだと思います」

ナショナルジオグラフィック日本版サイト
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/071900317/