■琥珀に閉じ込められていた初期のカエル「エレクトロラナ」

現生種のカエルは7000種あまりだが、そのうちの3分の1以上が世界各地の多雨林に生息している。
しかし、高温多湿の熱帯雨林の両生類については化石記録がほとんど存在せず、
古生物学者がその初期の進化を解明するための手がかりはないに等しかった。

 このほど、白亜紀の琥珀の中から、恐竜と同じ時代に生きていた熱帯産の小さなカエルの化石が4つ見つかった。
熱帯のカエルの化石としては最古のものだ。なかでも保存状態が良好なものが新種として記載され、
エレクトロラナ・リモアエ(Electrorana limoae)と名づけられた。

 研究チームの一員である米フロリダ自然史博物館の古生物学者デビッド・ブラックバーン氏は、
「小さな化石を光にかざして、中に入っているカエルを見たときには胸が躍りました」と言う。
「小さいカエルの化石で保存状態が良いものはほとんどないので、
エレクトロラナの最初の標本は非常に珍しい発見と言えます」

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、
中国地質大学の邢立達氏が率いるチームが6月14日に学術誌『Scientific Reports』に発表した論文では、
どのカエルも体長は2.5センチ未満と推定されている。

 カエル化石の専門家である英ロンドン自然史博物館のマーク・ジョーンズ氏は、
「琥珀に閉じ込められたトカゲやカエルは特に珍しいものではありませんが、これだけ古いものとなると別です」と言う。
「カエルの化石記録には偏りがあり、空白も多いのですが、ときどき今回のような貴重な発見があって、
欠けている部分を評価する助けになるのです」

■最古の系統の1つ
 9900万年前のカエルたちは、ミャンマー北部の同じ琥珀採掘場から見つかった。
ここではこれまでにも、恐竜の尾や、鳥のヒナや翼、無数の昆虫など、多くの貴重な化石が見つかっている。
琥珀からは有爪動物や水生のクモなど、今日の熱帯雨林でも見られる動植物の化石も見つかっていることから、
白亜紀には熱帯雨林だったと考えられる。(参考記事:「世界初、恐竜のしっぽが琥珀の中に見つかる」)

 今回のカエル入り琥珀は、ある中国人化石収集家から徳煦古生物研究所(広東省潮州市)に寄贈されたものだ。
邢氏によると、同研究所は以前からカエルの化石を3つ持っていたが、カエルの前肢と、
頭部のない体の印象化石(遺体は保存されず、その輪郭だけが化石となったもの)しかなかったという。
2010年に、より大きく、より完全な標本が奇跡的に寄贈されたことが、今回の研究を可能にした。

「少し腐敗していましたが、肉眼でも、非常によく保存された骨格を観察することができます」と邢氏は言う。

 CTスキャンにより、
今回のカエル、エレクトロラナの化石の三次元構造や解剖学的構造について多くの事実が明らかになり、
現生のカエルと多くの点でよく似ていることがわかった。
このカエルは、現生のスズガエルやサンバガエルなどと同じ、最古の系統の1つに属していたようだ。

 香港大学の古生物学者マイケル・ピットマン氏は、
「エレクトロラナの軟組織はあまり保存されておらず、
同じ場所で見つかったトカゲ化石のように驚くほどの保存状態とは言えませんが、骨格はよく保存されています。
熱帯雨林のカエルの最古の化石記録と言ってよいものです。
熱帯雨林は、現生のカエルにとっても非常に重要な生息地です」と言う。

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ナショナルジオグラフィック日本版サイト
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続く)