ロキタンスキー症候群の少女はついにヘルシーなセックスライフを手に入れた
ブラジルに住む23歳のJucilene Marinhoの膣管は、淡水魚ティラピアの皮でできている。

彼女は、ロキタンスキー症候群(MRKH)患者だ。先天的な原因により、女性生殖器の一部もしくは全体が欠損する腟欠損症の一種で、約5000人に1人の割合(メトロ紙)で発症するといわれる。

そんな彼女は昨年、革新的な手術を受けた。ブラジル北東部で行われた「新・膣形成術」は、膣と肛門の間に作られたスペースに、淡水魚の皮で覆われたチューブの管を挿入する。試験段階の術式だったが、Marinhoは希望を抱いて手術に踏み切った。英ザ ・サン紙やミラー紙など複数メディアが報じた。

■こうして「新しい膣」は出来上がった

手術を執刀したアシス・シャトーブリアン・マタニティ・スクール (MEAC)の婦人科医、レオナルド・ベゼラによると、3年前からティラピアの皮を火傷の治療に使っていたという。

通常は廃棄物になるティラピアの皮だが、水分量が多く、回復を促すコラーゲン(I型)とプロテインを豊富に含む研究結果がある。加えて、病気への抵抗力があり、人間の皮膚と同じように丈夫で、張りがある。そこからヒントを得て、応用することに決めた。

「新しい膣」の仕組みはこうだ。膀胱と直腸の間にスペースを作り、そこに、ティラピアの皮で覆った膣の形状のアクリル型を挿入する。壁が閉じないようアクリル型は10日間放置されるが、その間にティラピアの皮は細胞組織に吸収・転換され、患者の組織細胞に向かって、幹細胞のように細胞と成長因子を放出。本物の膣と同じような膣壁を形成する。ティラピアの皮の行方はと言うと、生体適合性を有しているから完全に身体に吸収されるそうだ。

ティラピアの皮は手術前に殺菌処理が施され、鱗と魚の生臭い匂いを除去。これをもとに作られた淡色のジェル状の被覆材は、冷凍保存で無菌状態のまま最長2年は保存可能という。

■「子どもを持つことが夢だった」少女に非情な診断

「新しい膣」を手に入れた、Marinhoは「人生が変わった」と興奮した様子。ニュースサイト「FocusOn News」の取材に対し、ヘルシーなセックスライフを楽しむことができる女性に、ようやくなれたと話した。

彼女は、10代のときに子宮頸、子宮、卵巣がないと診断されたが、思春期に彼女の身体は他の女性と同じように発育したそうだ。月経痛を経験することもあったという。それでも、生理は1度もなかった。

当時を振り返り、「たくさん泣いたわ。人生が終わったと思った。子どもを持つことが夢だったのに、それはもう叶えることはできないんだから」――彼女は、深い絶望感を味わった。

非情な現実に打ちひしがれる彼女を、さらに追い詰める出来事があった。当時交際をしていたボーイフレンドが、彼女の身体を馬鹿にし、別れを告げたのだ。

■人生初のセックスは「すべて上手くいった」!

それでも彼女は立ちあがった。試験段階だった「新・膣形成術」を受ける決心をし、いまやヘルシーなセックスライフを手に入れた。

昨年、人生で初めてセックスを経験したそうだ。相手は24歳のマーカス・サントス。1年以上にわたり交際を続けていて、常に彼女をサポートしてきた。

「最初はとてもナーバスだった。膣口を傷つけてしまうんじゃないかと思って。でも、すべて上手くいったの。痛みは感じなかったわ」と、Marinhoは幸せそうに明かした。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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