【5月23日 AFP】なぜ鳥類は歯を失ったのか? 歯をなくすことで体重が軽くなり飛行しやすくなるからだろうか?
それとも祖先の恐竜のようなギザギザの歯よりも、とがったくちばしの方が虫を食べるのに都合が良いからだろうか?

 鳥類が歯を失った理由について、英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)で
23日に発表された研究論文は卵のふ化を早めるためと結論づけ、
歯のないくちばしの進化に関する従来の科学的な見解に一石を投じた。

 恐竜の卵がふ化するまでの期間が数か月であったのに対し、現世鳥類の抱卵期間はわずか数日〜数週間となっている。

 この論文を執筆した独ボン大学(University of Bonn)のツールエイ・ヤン(Tzu-Ruei Yang)氏と
マルティン・サンダー(Martin Sander)氏によると、
これはふ化までの期間の60%を占める歯の発生を待つ必要がないためだという。

 卵の状態では捕食動物や自然災害に対して弱いので、胚の生存率はふ化が早まれば早まるほど高まる。
これこそが卵生である恐竜類や鳥類にとっての課題だった。哺乳類は胎生なので、胚は母親の体内で守られる。

 ヤン氏とサンダー氏は論文の中で
「胚の成長の高速化とそれによるふ化までの期間の短縮を選択した副次的影響として(鳥の)歯の喪失という
(進化的)選択が起きたと考えられる」と述べている。

■歯の化石の「年輪」を分析

 これまでの学説では、現在生きている「鳥類型恐竜」(鳥類)は飛びやすくなるために歯を失ったとされてきた。
しかしこの説では、中生代の非鳥類型恐竜の一部も歯のないくちばしを独自に進化させたことの理由を説明できないという。

 鳥にとってくちばしの方が餌を食べるのに都合が良いとする説もある。
しかし鳥とは餌が大きく異なる肉食恐竜の一部も歯を捨て、とがったくちばしを選択している。

 ヤン氏とサンダー氏によると、
空を飛ばない恐竜のふ化までの期間が従来の想定よりも
長い3〜6か月ほどであることを発見した昨年発表の研究がきっかけで今回の画期的な仮説に至ったという。

 両氏は2つの恐竜の胚の中にあった歯の化石の成長線(木の年輪のようなもの)を分析し、
ふ化までの期間が想定より長いのは歯の形成に時間がかかるためだと結論づけた。

 研究チームは、古い恐竜が卵を埋めていたのに対し、
初期の鳥類や一部の恐竜は開放型の巣で抱卵したこともふ化までの期間の短縮を促したかもしれないと指摘した。
その一方で、今回の仮説は卵がふ化するまでに長い時間がかかる現在の水生カメに歯がないという事実と合致しないことを認めている。(c)AFP

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AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3175626