高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉作業を行っている日本原子力研究開発機構は、
難関とされる放射能を帯びた液体ナトリウムの抜き取り作業について、海外の企業と共同で実施する検討を始めた。
この作業は国内で実績がないためで、すでに作業の実施経験がある仏、英両国の企業や組織を軸に提携先を探す。

 液体ナトリウムは、高速増殖炉の原子炉の冷却に用いられたが、空気に触れると発火し、
水とは爆発的な反応を起こすため、扱いが難しい。
原子力機構は廃炉計画で、2022年度までに抜き取りや処理の計画を検討するとしているが、
国内では経験がない作業であることから難航している。

 一方、フランスは1998年、
もんじゅより実用段階に近い高速増殖実証炉スーパーフェニックス(SPX)の廃炉を決定。
既に液体ナトリウムの抜き取りや処理を実施した。
英国などでも、高速増殖炉の廃炉の過程で液体ナトリウム抜き取り作業を行っている。

 このため原子力機構は今年3月、SPXを運営する仏電力(EDF)の幹部をもんじゅに招き、
技術的な情報交換の覚書締結を目指すことで合意。抜き取り作業を共同実施することについて、
契約を検討する意向も伝えた。具体的には、液体ナトリウムの安定化に関するデータの購入や、
抜き取り装置の共同開発などが対象になるとみられる。
同様の意向は、英国の原子力廃止措置機関(NDA)と関連企業にも伝えられた。

 原子力機構は、契約の相手先や内容を22年度までに具体化したい意向だ。
同機構の幹部は「液体ナトリウムの抜き取りのノウハウは国内では得られない知見だ。
先行国と情報交換し、必要に応じて有償での契約を検討したい」と話している。

 【ことば】高速増殖原型炉もんじゅ

 プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を使い、
発電で消費した以上のプルトニウムを生み出す構想の原子炉。
実用化までの4段階のうち2段階目の原型炉で、出力は28万キロワット。
1994年に初臨界に達したが、翌95年のナトリウム漏れなどトラブルが続き、
250日しか運転実績がないまま、2016年12月に政府が廃炉を決めた。
これまでに少なくとも1兆1313億円が投じられ、
廃炉費用は国の試算の3750億円を超える可能性がある。

図:もんじゅの原子炉の模式図
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2018/05/12/20180512ddm001010032000p/6.jpg?1

毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180513/k00/00m/040/106000c