「なんか今日は、やる気が出ないな…」

そう思って「やる気を出す方法」をネットで検索してみると、目標を立てる、ご褒美を設定する、テンションが上がる音楽を聴く…とか、うーん、当たり前なことしか出てこない。

もっと目からウロコの簡単ライフハックはないのだろうか? …というわけで、東京大学教授で脳研究者の池谷裕二先生にお話をうかがってきました。

■「やる気」は、科学的には存在しない概念だった!

斬新な「やる気を出す方法」を求めて研究室にお邪魔した編集部員を、穏やかな表情で出迎えてくださった池谷先生。

編集部・N:池谷先生、本日は「やる気を出す方法」を求めてやってきました。どうぞよろしくお願いします。

池谷先生:それで言うと、そんな方法はありません。だって、そもそも「やる気」自体が存在しないものですから。

編集部・N:!? いきなり衝撃的な結論が!

池谷先生:いいですか、「やる気」という言葉は、「やる気」のない人間によって創作された虚構なんですよ。今からそれを説明していきますね。

編集部・N:虚構…

池谷先生:人間は、行動を起こすから「やる気」が出てくる生き物なんです。

仕事、勉強、家事などのやらないといけないことは、最初は面倒でも、やりはじめると気分がノッてきて作業がはかどる。そうした行動の結果を「やる気」が出たから…と考えているだけなんですよ。

編集部・N:では、「やる気が出ない」から行動を起こせないというのは…?

池谷先生:それは心理的にありもしない壁を勝手につくっている状態。「やる気が出ない」というのは虚構にすぎません。

だから、面倒なときほどあれこれ考えずに、さっさと始めてしまえばいいんです。「やる気を出すにはどうすれば…」と考えるだけで行動しないことは、時間の無駄でしかありません。

編集部・N:そうだったんですね…

■「行動」があって「感情」が出るのが普通。人間は「やる気」という言葉に翻弄されている

編集部・N:では、「やる気を出す方法」を探すこと自体も無駄なことなんですか?

池谷先生:そうですね。本来「やる気」というのは行動を起こせば自然とついてくるものなので、わざわざ「やる気を出す」ために特別な方法を探す必要はないんです。

人間は言葉が発達したことで、行動の結果にしかすぎないものに対して「やる気」なんて言葉をつくってしまった。それに翻弄されているだけなんです。

編集部・N:「やる気」はそもそも存在しないし、単なる後付けの言葉にすぎないと。

池谷先生:「やる気」以外に関してもこれと同じような現象が見られます。

たとえば、普通は「楽しい」から「笑う」という行動が出ると思われていますが、これも本来的には「笑顔をつくる」と「楽しくなる」なんです。まず行動があって、その後感情が芽生えるんです。

同じ原理で、ガッツポーズという「行動」を取ってみてください。達成感という「気分」が生じるんです。私たちの感情や気分の起点になるのは、脳ではなく身体なんです。

編集部・N:脳が「脳内物質」みたいなものをつくって、そこから感情が生まれるものだと思ってました…

池谷先生:最終的にはそうですけど、そもそも脳にスイッチを入れるのは身体。まずは身体を動かさない限りスイッチは入らないわけです。

(以下省略、つづきはウェブで!)

https://r25.jp/article/540681193689662300