地上約600km上空の軌道上に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡は、
大気や天候の影響を受けずに天体観測を可能とする、宇宙に設置された天文台ともいうべき宇宙望遠鏡です。
1990年の打ち上げ以来数多くの発見を成し遂げてきたハッブル宇宙望遠鏡が、
宇宙空間で重力が光をねじ曲げることで作られる「アインシュタインリング」という現象をとらえました。

Hubble Finds an Einstein Ring | NASA
https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2018/hubble-finds-an-einstein-ring

Hubble Telescope Discovers a Light-Bending 'Einstein Ring' in Space
https://www.space.com/40255-hubble-telescope-einstein-ring-photo.html

宇宙空間において、重力が天体の発する光をねじ曲げることで光が集まり、
通常よりも明るく見える現象を重力レンズといいますが、
その中でも集まった光がリング状に見えるものを特に「アインシュタインリング」と呼びます。
アインシュタインリングという名前は、
20世紀初頭に相対性理論を発表した理論物理学者アルベルト・アインシュタインの
「巨大な質量は空間と時間を歪める」という理論が、重力レンズの存在を予期したものであることに由来します。

SDSS J0146-0929と名づけられた巨大な銀河団は、何百もの銀河が持つ重力によって相互に引っ張り合い、
一つの銀河団として結合している状態を保っています。この空間には何百もの銀河による大きな質量が存在しており、非常に強い重力原となっています。

非常に巨大な質量を持つSDSS J0146-0929の周辺を通る光がその重力によって経路を歪められ、
迂回してきた光がリングのように観測されるのがこのアインシュタインリングです。
重力リングは対象物の姿をゆがめてしまうという難点もありますが、
一方では巨大銀河団の向こうにあるために直接は見られないはずの天体が観測可能になることもあるため、
天文学者にとって重力レンズは非常に有益なものでもあります。


たとえば、2015年にはチリに設置された電波望遠鏡の「アルマ望遠鏡」が、
ビッグバンからわずか24億年後に形成された銀河をアインシュタインリングによって観測し、
初期の宇宙に対する研究が進展しました。

2016年にはちょうこくしつ座矮小銀河内に少なくとも12以上のアインシュタインリングが発見され、
研究チームはダークマターの存在を調査するためにアインシュタインリングを応用できるとしています。
アインシュタインリングはただ宇宙の美しさを感じさせてくれるだけでなく、
宇宙の神秘を解き明かす重要な鍵になるかもしれません。

関連ソース画像
https://i.gzn.jp/img/2018/04/16/hubble-telescope-discovers-einstein-ring/01_m.jpg
https://i.gzn.jp/img/2018/04/16/hubble-telescope-discovers-einstein-ring/02_m.jpg

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180416-hubble-telescope-discovers-einstein-ring/