イギリスのユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)などの科学者による研究チームが、
バクテリアに対する攻撃性を持つ大きさ20ナノメートルほどの微細なタンパク質「人工ウイルス」の合成に成功したことを発表しました。

BACTERIOPHAGES OF THE URINARY MICROBIOME
http://jb.asm.org/content/early/2018/01/10/JB.00738-17

Synthetic ‘virus’ to kill bacteria
http://www.ucl.ac.uk/news/news-articles/0118/230118-synthetic-virus

UCLとイギリス国立物理学研究所(NPL)による研究チームが開発したのは、
中空構造を持つ大きさ20ナノメートルほどのタンパク質の組織とのこと。
この組織は、自然に存在しているウイルスの外側構造を模したものになっており、
自分よりも大きなバクテリアの表面に付着するとその細胞膜を破壊してしまうことが可能です。

研究チームの一員であるHasan Alkassem氏によると、
「バクテリアの表面に降り立って数秒後に人工ウイルスはバラバラになり、急激に細胞膜に穴を開けることで、
内容物が漏れ出すようになります。実験では、バクテリアが死滅する様子が見られました」とのことで、
バクテリアに対して明確な攻撃性を持っていることが確認されています。

この発見によって期待されているのが、抗生物質の効かなくなった菌「耐性菌」に対する処置の開発です。
世界では70万人の患者が耐性菌が引き起こす病気に悩んでいるといわれており、
効果的な治療法がないのが大きな問題となっています。この問題に大きな一石を投じる可能性があるのが、
この「人工ウイルス」です。
研究チームの一員であるAlex Yon氏は「人工ウイルスの作用する仕組みは、
バクテリアは人工ウイルスに対する耐性を備えられそうにないことを意味しています。
また、バクテリアの中にある特定の細胞に直接リーチしないと効果を発揮しない従来の技術に対する
アドバンテージを備えています」と人工ウイルスの利点を述べています。

さらに、この人工ウイルスは人の体細胞には影響を及ぼさないながらも、
通常のウイルスのように細胞内へと進入する能力を備えていることも、
今後の医療に役立てられる可能性を示しているとのこと。薬剤を細胞内に直接届けたり、
遺伝子に対する処置を細胞の中から行うことを可能にする道を開く技術であると捉えられています。
論文の主執筆者でNPLのMax Ryadnov博士は、
「この成果は、計量学の手法および、産業・医療分野における人工バイオロジー分野の潜在力を実現するために
NPLで開発されている物質を改良するための『ツールボックス』として利用することが可能です。
また、この研究は早急な対策が必要な感染症に対する代替治療を実現する上での長期間かつ
創造性のあるソリューションとなるでしょう」と述べています。

関連ソース画像
https://i.gzn.jp/img/2018/02/06/synthetic-virus-kill-bacteria/00_m.jpg

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180206-synthetic-virus-kill-bacteria/