名古屋大学と東京医科歯科大の研究チームは、血糖値に応じて自動的にインスリンを出せる新素材を開発した。
実用化すれば、患者の皮膚に貼るだけで糖尿病治療ができるようになり、5年後にヒトでの臨床研究を目指すという。

 研究成果が米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」(電子版)に掲載された。

 糖尿病は血糖値を下げるインスリンを膵臓(すいぞう)で作り出せなかったり、インスリンの効きが悪くなったりする。
治療で患者が自分でインスリンを注射する場合、指先で血糖値をはかり、1日に4回程度の注射が必要になるなど手間がかかる。

 研究チームは、フェニルボロン酸という有機化合物を高分子のゲルに組み込んだ新素材を開発。
このゲルは、周囲のブドウ糖濃度が低い時には薄い膜のような構造に覆われているが、濃度が高くなると、
1秒以内に分子構造が変化し、膜のような構造が無くなる。ブドウ糖濃度が低くなればまた元に戻る。

 ゲルの中にインスリンを入れておけば、血糖値が高い時にはインスリンを放出し、
血糖値が低くなれば膜のような構造に覆われてインスリンの放出が止まる。

 実験では、カテーテルの先端に開発したゲルを塗り、糖尿病のマウスの皮下に埋め込んだ。
ブドウ糖を与える試験では、正常マウスに近いほど血糖値の上昇が抑えられた。
低血糖も起こらず、効果は3週間持続することも確認した。

 名古屋大環境医学研究所の菅波孝祥教授は「皮膚に貼るだけで、
インスリンを注入できる機器が安価に作れる可能性がある」と話す。

画像:マウスを使った実験では、インスリンを入れた袋につないだカテーテル先端の側面に穴を開け、
内側に開発したゲルを塗った装置が使われた(名古屋大学提供)
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20171231000903_commL.jpg

朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASKDW64NXKDWOIPE017.html