■後遺症の改善に期待

 脳梗塞の患者の脳に、本人の骨髄から採取した細胞を注入し、神経の再生を促す国内初の臨床試験(治験)が、北海道大病院で行われている。
富山大大学院医学薬学研究部(医学)脳神経外科学分野の黒田敏教授(56)が北海道大と共同研究している。
注入した細胞は、傷ついた部位へ移動して神経細胞に分化すると考えられており、
手足のまひなどの後遺症を改善させる再生医療として実用化を目指す。(社会部・荒木佑子)

 脳梗塞は、血管が詰まってから脳神経組織がダメージを受けるまでの時間が非常に短い。
まひなどの原因となる傷ついた神経組織を再生させる治療法は確立されておらず、有効な治療法の開発が求められている。

 治験では、発症2週間以内に、患者の腰の骨に針を刺して骨髄の中にある細胞集団「骨髄間質細胞」を採取。
培養して増やした後、脳内に直接注入する。培養は、健常なボランティアから得た血小板を使って行う。
11月までに2人の手術を終えており、計6人に実施予定。1年間にわたり有効性や安全性を確かめる。

 黒田教授は前任地の北海道大時代の2000年ごろから、この治療法に関する研究を始めた。
これまでの動物実験で、脳内に注入された骨髄間質細胞は、脳梗塞で傷ついた部位の周りに移動し

▽神経細胞に分化する
▽栄養因子を出して運動機能を回復させる
▽炎症を抑える物質を出す−という複数のメカニズムで回復を促すことが分かってきている。

 投与した細胞の動きは磁気共鳴画像装置(MRI)で追跡し、
脳の機能は陽電子放射断層撮影(PET)でチェックする。
黒田教授は「細胞を培養する施設があれば可能な治療なので、最終的に効果が確認できれば、
富山大附属病院をはじめ全国の中核的な病院で実施できるようにしたい」と話している。


◆脳梗塞◆
 脳の血管が詰まって酸素や栄養が供給されなくなり、脳神経組織が傷つく病気。
国内では年間約30万人が新たに発症するとされる。
多くの人が亡くなったり、手足のまひや言語障害などの後遺症に苦しんだりしている。
前兆として、ろれつが回らない、片側の手足に力が入らない、
言葉が出なかったり理解できなかったりするなどの症状が一時的に現れる「一過性脳虚血発作」がある。

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