NASAは2012年以降、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送をSpaceXなどの民間企業に委託していますが、
この民間宇宙企業の利用によって、物資輸送にかかる費用を最高で3分の1に削減することに成功していることが明らかになりました。

An Assessment of Cost Improvements in the NASA COTS/CRS Program and
Implications for Future NASA Missions
(PDFファイル)https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20170008895.pdf

In-depth study: Commercial cargo program a bargain for NASA | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2017/11/in-depth-study-commercial-cargo-program-a-bargain-for-nasa/

NASAはSpaceXやOrbital ATKなどの民間企業に、ISSへの物資輸送を民間委託しています。民間宇宙企業を活用することで、
NASA自身が行うよりも低コストで物資輸送ができているという推測はされていましたが、
詳細については明らかにされてきませんでした。

そんな中、ケネディ宇宙センターのエドガー・ザパタ氏が発表した研究論文で、
SpaceXやOrbital ATKによる物資輸送コストの数値が明記されています。
それによると、1kgの重量の物資を輸送するのにかかるコストが、SpaceXの場合で8万9000ドル(約1000万円)、
Orbital ATKの場合で13万5000ドル(約1500万円)であることが明らかになりました。
かつて、スペースシャトルによって物資を輸送していたころの費用は、1kgあたり27万2000ドル(約3100万円)と推測されていることから、
Orbital ATKで半分、SpaceXに至っては約3分の1の低コストで物資輸送を実現していることになります。


NASAはSpaceXのロケット「Falcon 9」の開発支援として約1億4000万ドル(約160億円)を投資していますが、
すでにアメリカ財務省は初期投資分を取り戻し、
SpaceX関連企業からの税収や雇用創出などのメリットを得ているとザパタ氏は考えています。

NASAはSpaceXとボーイングの2社と、ISSへの宇宙飛行士の移送オペレーションについても契約しており、
2019年に最初の民間企業による宇宙飛行士移送が始まる予定です。4人の宇宙飛行士をISSに送り込む費用は、
SpaceXが405万ドル(約4億6000万円)、ボーイングが654万ドル(約7億4000万円)になると推測されており、
やはりスペースシャトルの打ち上げよりも大幅に低コスト化が見込めるとのこと。
ザパタ氏によると、物資と宇宙飛行士の両方の輸送コストを全体で考えた場合、NASAによるスペースシャトル計画に比べると、
民間委託によって約37%から39%に費用を抑えられるそうです。

ただし、月や火星を含む「Deep Space」の領域の探査についても民間企業を利用するかどうかについては意見が分かれています。
ザパタ氏はDeep Spaceでも民間利用によってコスト低減効果を出せるメリットがあると考えていますが、
NASAの前長官のチャールズ・ボールデン氏は、「地球に近い低軌道においては民間支援を歓迎していたが、
Deep SpaceはNASAの領域だ」という考えを明らかにしていました。
Deep Spaceでの宇宙活動でNASAが民間企業を活動するかどうかは、トランプ政権の意向にも大きく左右されそうです。

GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20171117-spacex-save-nasa-money/