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5つ星のうち1.0 12歳云々は抜きにして
投稿者Winelover2017年7月11日
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本書を読む方は量子力学に多少なりと興味を持つ人々であろうから、その意味でタイトルの12歳云々は抜きで内容について評価するのが妥当であろう。

著者が目指したという入門書と専門書の中間にある「中間書」(センスのないネーミングだが)になっているかというと、正直に言ってまったく成功していない。
ギリシャ自然哲学の見方などは近代物理学とは少なくとも無関係であり、入門書に任せればよい。
またブルーバックス等よりも専門に近い書き方をするなら、脇道や余談はもっと控えめにし、整理して書くべきである。
現状の書き方では単なる衒学趣味が鼻につくだけの嫌味な文体である。
かといって専門書より簡単に説明できているかというと、定義や用語の説明がない部分も多く、不親切でそのままでは理解できない。
また肝心なところは「分からなくて当然」と言っているようにも読め、これもいただけない。
「自然界の現象を記述するものにも虚数が直接出てくるのは気持ち悪い」なる言及などは著者の主観に過ぎず、入門書としてすら不適切な表現である。

レイリー-ジーンズの法則を波長で表した式および式変形は初歩的な間違いをしており、
内容もだが微分などの物理数学も身についている(いた)とは考えにくい。
この状態で後半のシュレーディンガー方程式を分かりやすく説明できるはずもなく、結果も推して知るべしである。

著者の年齢を本当だとすると大変優秀で勉強熱心だとは思うが、年間3000冊の本を読んだなら平均して1日8冊以上となる。
著者が主張するように法律、哲学、物理学、天文学のそれなりの本を読んだのだとすれば、内容を消化しているはずもなく、話を誇張しすぎにも程がある。
そういうところは年齢相応だろうか。

本書は背伸びしたい少年のエッセイであり、少なくとも内容を理解したい読者には無意味である。他の良書にあたるべきであろう。