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2017/6/8 2:00

 これまでで最古となる30万年前の現生人類の化石を北アフリカのモロッコで発見したと、ドイツなどの国際チームが8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。従来の年代を10万年近くさかのぼり、考えられていたより早い時期にアフリカで現生人類が進化したことを示す証拠だとしている。

 化石から復元した頭蓋骨は顔立ちが現代人に似ている一方、脳を収める頭部の形状に、ネアンデルタール人に似た原始的な特徴が残っていた。チームは「アフリカ大陸での石器文化の広がりと相まって初期の現生人類が進化した」とみている。

 ドイツのマックスプランク進化人類学研究所とモロッコの国立研究所のチームは、2004年からモロッコ西部のジェベル・イルード遺跡を調査し、5人の頭やあごの骨を発掘。石器も含めて分析し、35万〜28万年前のものだと結論付けた。

 現生人類ではエチオピアで出土した20万年前の化石がこれまで最古。南アフリカでは現生人類の可能性がある26万年前の頭蓋骨片が出ている。

 ただどの化石を現生人類に含めるかや、年代測定の信頼性などを巡って専門家に異なる意見もあり、議論を呼びそうだ。

 チームはモロッコの化石の立体データから頭蓋骨を復元して分析。脳を収める領域は前後に長く、初期人類の特徴が残っていた。エチオピアや南アフリカの化石も似た特徴があり、同種の石器が一緒に出土していることから、30万〜20万年前にはアフリカ各地で現生人類が暮らしていたとみている。

 どのようにアフリカ各地に広がったかは不明だ。チームはその後の脳の進化が現代人につながる知性を生み出したとみている。

 遺跡ではガゼルなど動物の骨が出土し、狩りをして火を使った痕跡も見つかった。〔共同〕