千葉大学などの研究グループは、関節リウマチの治療薬として既に利用されている
インターロイキン(IL)-6受容体抗体が、ある種のうつ病患者に有効である可能性が示されたと発表した。

 うつ病は、非常によく知られたメジャーな精神疾患であるが、その生理学的機序は今なお、諸説あって明瞭ではない。
また、そもそもうつ病と診断されている疾患群が、特定の単一の疾患であるのか、複数の疾患の総体たるものなのか、すら明らかではない。

 ただし、うつ病について、いくつかの有効な治療薬が既に実用化されていることと、そして、にも関わらず、
その治療薬に反応しない患者が存在する、ということは確かである。このような患者は、現状では、
治療抵抗性うつ病と呼称されている。

 そしてまた、もう一つの知見として、多くの過去の研究において、うつ病患者は血液中のIL-6濃度が健常者と比較して高い、
ということが確かめられている。IL-6とは、T細胞やマクロファージなどによって産出されるタンパク質の一種で、
液性の免疫を制御する、サイトカインと呼ばれる物質の一つである。なお、関節リウマチの原因となるものでもある。

 今回の研究はマウスによって行われたものであるが、うつ病モデルの実験用マウスに、
IL-6受容体抗体を静脈投与すると、
即効性の抗うつ効果が示されることが分かったという。また、うつ症状を示すとされる、
マウスの脳内の樹状突起スパインの密度減少も改善していた。

 つまり、IL-6の阻害は、何らかの形で抗うつ作用に関わっている可能性があるのである。
この結果は、近年唱えられている、「うつ病の炎症仮説」を支持するデータの一つとなる。

 この研究の詳細は、オープンアクセスジャーナルTranslational Psychiatryに掲載されている。(藤沢文太)

財経新聞
http://www.zaikei.co.jp/article/20170604/375102.html