優れた武将は、主戦力をいかに有効に使うかで、戦闘の結果が決まることを知っている。
その主戦力を有効に使うには、非主戦力の存在が不可欠であることも知っている。


正直に本心を吐露すること自体は悪くない。
だがそれをしてよいかよくないか、してよい相手かそうでないか、の違いは厳として存在する


優しい若者を、私は若者だと思わない。
立居振舞いの優しさを言っているのではない。心の優しさとでもいうものである。
若者が、優しく有れる筈はない。
全ての事が可能だと思っている年頃は、高慢で不遜で有る方が似つかわしい。


文化を共有しない外国との交渉は、相手側が思わず苦笑して、
ヤラレタネ、と思った時からスタートすべきなのである


はじめに立てた計画を着実に実行するだけならば、特別な才能は必要ではない。
だが、予定していなかった事態に直面させられた時、
それを十二分に活用するには、特別に優れた能力を必要とする。


すべての面で苛酷な現実の中でも精神のバランスを失わないで生きていくのは、
苛酷な現実とは離れた自分一人の世界をつくり出せるかどうかにかかってくる。


世間には、他人の業績を、半分誉め半分けなすことを
モットーにしているのではないかと思う人がいる。
この種の人は、この奇妙のバランスをとることで、責任を回避しているのだ。
言い換えれば、勇気のない人である。


国内に不安をもつ支配者は常に、対外関係を確かなものにしようと努める。


いかに巧妙に考案された戦略戦術でも、
それを実施する人間の性格に合っていなければ成功には結びつかない。
人はみな、自分自身の肌合いに最も自然であることを最も巧みにやれるのである。


盛者必衰は、歴史の理である。
現代に至るまで、一例も例外をみなかった、歴史の理である。それを防ぐ道はない。
人智によって可能なのは、ただ、衰退の速度をなるべくゆるやかにし、
なるべく先にのばすことだけである。

塩野七生