私が数を背景にした集団行動を嫌う理由は、
集団行動は原理的に醜いから、原理的に不正だから、原理的に悪だからである。
それは一時的な戦術であるにせよ、自分たちは完全に正しいという姿勢をとる。
相手は完全にまちがっているという単純な二元論を演技する。
中島義道『日本人を<半分>降りる』


私の敬愛する森茉莉さんは
「相手の気持ちを考えないって、なんと楽しいのだろうか」と吐露している。
こうした発言はまことに健全です。
中島義道『私の嫌いな10の言葉』


人生は恐ろしく不平等であり、恐ろしくアンフェアだ。
そのうえ、いわゆる「偶然」がいたるところで
われわれを待ち構えていて、われわれの計画をぶち壊す。
それでもわれわれは生きている限り、選択しなければならず、
しかもその結果に責任を負わねばならないんだ。
中島義道『真理のための闘争』


大森が哲学者として偉かったのは――変な言い方だが――本当に驚いていたからだ。
眼球も視神経も大脳も物質にすぎない。なのに「見える」とは驚くべきことではないか?
大脳の中に「意志」など発見できない。
だが、私が腕を上げることができるとは何とグロテスクなことか?
中島義道『哲学者とは何か』


わかったようなことを言う大人(私が一番嫌いな人種)は、
よく「自分をよく見つめなさい」とのたまいますが、
「はい」と答えながらも、私はよくよく考えてみると全然(内的に)
自分を「見つめて」いないことがわかる。
私はただいろいろ思いをめぐらせているだけです。
中島義道『「私」の秘密』


「なぜこうしたのか?なぜああしなかったのか?」と頭が痺れるほど考えに考える。
そして、結局はわからないのだけれど、「わからない」ことをあらためて
確認することによって気持ちは落ち着き、生きていく気力が湧くのだ。
中島義道『人生に生きる価値はない』


考えない者の強さ、考えることができない者の強さ、
しかもそれでヨシとしている者の強さ、
「俺、バカだから」と居直る者の強さは、筋金入りの強さである。
まさにニーチェの語るごとく
「悪人がいくら害悪を及ぼすからといっても、善人の及ぼす害悪に勝る害悪はない」。
中島義道『エゴイスト入門』