本当の絆とは何なのか。
それは、生きていくために、食べていくために力を合わせて働くこと。


右肩上がりの時代は、もうとっくに終わりました。
これからは生活を悪戯に膨張させるのではなく、
生活の質を高めていくこと。それが成熟した社会のあるべき姿です。


より強いとされる者がより弱いとされる者に、
かぎりなく弱いとおもわれざるをえない者に、
深くケアされるということが、ケアの場面ではつねに起こるのである。


現代は、待たなくてよい社会、待つことができない社会になった。
私たちは、意のままにならないもの、どうしようもないもの、
じっとしているしかないもの、そういうものへの感受性をなくしはじめた。


1つ1つはだれもがもっているものであるにしても、
それらの組み合わせにひとりひとり独自のものがあるのだ。


(若者たちは)バブルが崩壊して以降、一度も右肩上がりの社会というのを体験したことがない。
「明日は今日よりきっと良くなる」という幻想も共有していない。

鷲田清一(哲学者)