・高齢化が進むスイス社会 高齢者はなぜ犯罪に手を染めるのか

高齢化社会が進むスイスで、60歳以上による犯罪件数が増加している。シニアたちが犯罪に手を染める理由は何なのか。

チューリヒ応用科学大学(ZHAW)犯罪防止研究所所長のディルク・バイアー他のサイトへ教授によると、60歳以上による国内の刑法犯件数は2011年から2018年までで30%増えた。ただスイスの全人口に占める60歳以上の割合も同期間で約15%増加しており、それを考慮すると増加率は少し縮まる。
バイアー教授は「高齢者の犯罪が大幅に増えているわけではないが、間違いなく増加していると言える」と指摘する。罪種別では、侮辱、暴行、万引きがトップ3だ。

スイスではまだマイナーな問題だが‥
高齢者による犯罪は、この国ではそれでもまだマイナーな問題だという。高齢者の犯罪率(一定期間に発生した犯罪件数を単位人口で割ったもの)は60歳未満よりずっと低いからだ。予防・介入措置の優先度も必然的に低くなるため、スイスでは同分野の研究が発展していない。
万引き、侮辱、暴行のほか、目立つのは過失傷害、詐欺、名誉毀損、セクシュアルハラスメント、脅迫、公務執行妨害だという。

貧困ではなく社会的認知の欠如
犯罪の動機は何なのか。バイアー教授は、動機は他の年齢層と大きな違いはないと指摘。要因は主に5つあるという。

偶発性:暴力や攻撃的な行動は、アルコール摂取など偶発的な要素が大きい。詐欺や窃盗の場合もこうした攻撃的な行為が発生する可能性がある。
貧困:スイスでは、65歳以上の貧困率は約15%。公的支援は一定の範囲に限られるが、貧困が犯罪(特に窃盗)の決定的動機とまでは言えない。
社会的認知の欠如:高齢者と若者のいずれの場合でも、これは暴行などの動機になりえる。しかし、実証研究はこれまで行われていない。
精神疾患:殺人を含む身体的暴行は、精神疾患が一部要因になっている。2018年、殺人で起訴された60歳以上の被疑者は22人に上り、このうち6人が80歳以上だった。

病気や精神障害を起因とする高齢者の犯罪がどれくらいあるのか、はっきりした数はない。ただこうした病気が犯罪につながるリスクはかなり低いといえる。重要なのは、こうした病気を抱える高齢者が家庭や施設でどのようなケアを受けているかという点だ。

社会環境:いずれの年齢層も、刑法犯の動機の一部は、狭い社会的環境と人格に起因する。両親からネグレクトされている、学校で芳しい成績が挙げられない、悪い友達と付き合っている、自制心が低いーなどの環境にいた若者たちが、違法行為をするケースが目立つ。こうした具体的な要因は、予防措置の強化が見込める。単に「非難すべきは社会」と決めつけるのはいささか単純すぎる。
高齢者の犯罪もまた社会問題の表れともいえるが、同じ困難を抱える高齢者のほとんどは罪を犯さない。つまり、経済的困窮・社会的孤立を改善するだけでは劇的な効果は望めない。
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2019-10-15 08:30 Swiss info
https://www.swissinfo.ch/jpn/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E5%8C%96%E3%81%8C%E9%80%B2%E3%82%80%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E7%A4%BE%E4%BC%9A_%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E3%81%AB%E6%89%8B%E3%82%92%E6%9F%93%E3%82%81%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/45284642