・「輸入された反ユダヤ主義」の脅威 :長谷川 良 (ウィーン在住)  

 オーストリア国民議会のヴォルフガング・ソボトカ議長は今月15日、国内の反ユダヤ主義に関する調査結果を発表した。同調査はIfes世論調査機関が議会の要請を受けて実施したもので、16歳以上の国民2100人を対象にインタビューした。それによると、「オーストリアでは反ユダヤ主義はもはや消滅したと信じられてきたが、実際は至る所で見られる」という予想外の内容だった。調査は6つの質問に「イエス」か「ノー」と答える形式で行われた(表を参考)。

 @ユダヤ人は世界を支配している
            
              イエス   ノー
            
  オーストリア人    39%  39%
  トルコ系       63%  14%
  アラブ系       64%  27%

 Aイスラエルが存在しなかったら、中東は平和
 
  オーストリア人    11%  68%
  トルコ系       51%  27%
  アラブ系       69%  23%

 Bイスラエルはパレスチナを第2次世界大戦のドイツと同じように対応

  オーストリア人    34%  37%
  トルコ系       65%  12%
  アラブ系       76%  17%

 Cユダヤ人が歴史で迫害されるのは、ユダヤ人の責任もある
 
  オーストリア人    19%  62%
  トルコ系       50%  23%
  アラブ系       40%  51%

 Dユダヤ人か否か直ぐに判る

  オーストリア人    11%  76%
  トルコ系       41%、 40%
  アラブ系       43%  50%

 E強制収容所やユダヤ人迫害は過大に叫ばれている

  オーストリア人    10%  78%
  トルコ系       41%  30%
  アラブ系       35%  51%

(出所・オーストリア代表紙プレッセ3月16日)

 具体的には、国民の10%は「自分は反ユダヤ主義」という自覚を有し、約30%は無自覚だが、「反ユダヤ主義傾向がある」という。反ユダヤ主義傾向が強い国民は、オーストリアで生まれたか、10年以上オーストリアに住んでいるトルコ系とアラブ系出身者だ。

 例えば、ユダヤ強制収容所やユダヤ民族迫害について「多くは過大に報じられていると思うか」の質問に対し、トルコ系は41%、アラブ系の国民は35%が「そのように感じる」と答えている。通常の国民は10%に過ぎない。ちなみに、トルコ系やアラブ出身の国民は目の前の国民がユダヤ人か否かを素早く識別できるという。

 一般的な傾向としては、若く、高等教育を受けた国民は反ユダヤ主義傾向が少なく、右派的、権威主義的な国民は反ユダヤ主義傾向がみられる。良きニュースは、「ユダヤ人は世界大戦で迫害されてきた民族であり、オーストリアはユダヤ人を支援する道徳的義務を持っている」という見方が増えてきていることだ。

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(反ユダヤ主義研究の発表の様子)
https://media.diepresse.com/images/uploads_620/7/2/3/5601059/44557BC6-AB63-477A-B9D5-ED2295E9E6F8_v0_h.jpg

2019/3/26(火)Viewpoint
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