・豪、外国人就労ビザ変更から1年 「内向き」化に懸念

オーストラリアが自国民の優先を掲げ、駐在員など外国人ビジネスマンらに厳しい就労ビザの取得義務付けをしてから約1年がたつ。多様な人材を受け入れ、経済成長につなげてきた豪州の政策変更に豪企業からは不満の声が続く。近く総選挙も控え、外国人を雇用する企業からはさらなる不安の声も聞かれる。

「ビザ取得に半年かかり、日本人駐在員の着任が遅れた」。豪州の日系企業の間ではこんなぼやきが数多く聞かれる。最長4年の通称「457」就労ビザが2018年3月に廃止され、要件を厳格化した「テンポラリー・スキル・ショーテッジ(TSS)」と呼ばれる新ビザが導入されたためだ。

同ビザは、2年と4年間の2種類に変更され、さらに就労が認められる職種も約650から約450へと大幅に減った。審査の厳格化などでビザの発給は滞り「とりあえず短期ビザで入国し、目当ての長期ビザの発給を待つ人もいた」(日系企業幹部)。外国人を多く雇用する豪企業も影響を受けた。

カンタス航空は新たなビザではパイロット不足を補えないとし、より長期の滞在を認めてもらう措置を政府に申請した。ソフトウエア豪大手、アトラシアンのマイク・キャノンブルックス共同最高経営責任者(CEO)も技術革新には高技能の外国人が必要と訴え「ビザ変更は豪州の名声を傷つける」と批判した。

さらに企業を不安にさせているのが、5月末までにある総選挙だ。支持率で優勢の野党・労働党が政権をとれば「(支持母体の)労働組合からの要請で、ビザ要件がさらに厳しくなる」(ビザ関係者)可能性もあるからだ。多文化主義を掲げる豪州の「内向き」化に身構える企業は多い。

関連:Australian visas: What’s changing from July 1
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2019/3/4 21:00 日本経済新聞
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