・サンショウウオを守る修道女たち、メキシコ・パツクアロ湖

【10月13日 AFP】純白のガウンの袖をまくり上げて水槽に手を入れると、シスターはぬるぬるとした巨大なサンショウウオをつかみ、水を滴らせたまま持ち上げた。

 修道女のオフェリア・モラレス・フランシスコ(Ofelia Morales Francisco)さんは、メキシコのパツクアロ(Patzcuaro)湖に住む絶滅危惧種のサンショウウオを救おうとしているドミニコ修道会のチームの一員だ。

 体の部位を再生させる驚くべき能力で知られるこのサンショウウオは、先住民プレペチャ(Purepecha)からは神とあがめられ、科学者らの熱心な研究対象となっている。野生で生息が確認されているのは、ここメキシコ西部パツクアロにある「われらが健康の聖母教会」に近い湖だけだ。しかし湖はひどく汚染されており、シスター・モラレスら修道女が立ち上がることになった。

 彼女たちはこのサンショウウオ、「デュメリルサラマンダー」がいつか野生で復活する助けになればと飼育プログラムを開始した。

 この仕事を行うには、慈善活動と礼拝という修道院の日課以外の時間を捻出する必要があり、当初は慣れない野外で手を汚さなればならなかった。例えば、頭部の周りの房飾りのようなエラが特徴的なこの暗緑色のサンショウウオの繁殖習性を覚えなければならない。このプロジェクトに関わって18年になるモラレスさんは、「(交尾をさせるのに)最も良い方法は、雄1匹に対し、雌3匹を合わせることです」とAFPに語る。

 もっと難しい仕事もある。「子どもはとっても慎重に育てなければなりません。共食いしようとするからです」

 当初、修道女たちが動いたのは、地元で「アチョケ」と呼ばれるこのサンショウウオを救うためではなかった。殺すつもりで始めたのだ。

■サンショウウオを使ったシロップとスープ

 この教会でこのサンショウウオの調理を始めたのは、100年以上前。貧血や肺の感染症に効果があると評判だったサンショウウオのシロップを作り始めたのだ。先住民プレペチャの知恵だろう。プレペチャの民は、このサンショウウオは羽の生えたヘビの神ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)の双子の兄弟だとしてあがめ、昔からスープにしてきた。

 修道女たちが作るサンショウウオのシロップはよく売れ、教会の主な収入源となった。そして未処理の汚水や侵略的外来種のコイ、湖の資源の乱用などのせいでサンショウウオの数が少なくなったとき、修道女たちは教会の存続も危機にさらされていることに気付いた。

 それからは、訓練を受けた生物学者でもある司祭を招き、このサンショウウオに関するあらゆることを習った。現在、飼育しているのは約300匹。2部屋分の水槽ではこれが限度だ。

 しかし、1瓶200ペソ(約1100円)で売っているシロップを作り続けるには十分過ぎる。よって、研究のため大学などにも提供しているが、時に修道女たち自身の献立となることもある。「素晴らしいスープが取れます」とモラレスさんは言う。

 メキシコ生物多様性国家委員会で絶滅危惧種の保護のために働いているマリア・エステル・キンテロ(Maria Esther Quintero)氏がAFPに語ったところによると、サンショウウオの数が激減したのは、1980年以降だ。「野生に残っている『アチョケ』は本当に、本当に少ない」

 国際自然保護連合(IUCN)は、パツクアロ湖のサンショウウオの減少は「非常に深刻だと思われ、ほぼ絶滅に近いかもしれない」と警鐘を鳴らしている。修道女たちは自分たちが育てているコロニー(個体群)によって、この減少傾向を逆転できればと願っている。(c)AFP

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2018年10月13日 9:00 AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3190485?act=all