アメリカ議会の与党、共和党の重鎮、ジョン・マケイン上院議員が25日、亡くなりました。81歳でした。

マケイン議員は「物言う与党議員」として知られ、トランプ大統領の外交や移民政策などついて厳しく批判していました。

マケイン議員は祖父も父も海軍大将という海軍一家に育ち、みずからも海軍のパイロットとしてベトナム戦争に従軍。
捕虜になりながらも5年半にわたって耐え抜いた英雄として知られています。

その後、下院議員を経て1987年から6期連続で西部アリゾナ州選出の上院議員を務めました。

2008年の大統領選挙では共和党の候補に指名され、民主党のオバマ氏と激しく争いましたが、敗れました。

マケイン議員は外交や安全保障政策に精通し、トランプ大統領が公約に掲げた医療保険制度をめぐる法案に反対したほか、トランプ大統領の外交政策や移民政策、それにメディアに対する姿勢を厳しく批判し「物言う与党議員」として知られていました。

マケイン議員は去年、脳腫瘍を患っていると公表していて、今月24日には本人の意思で治療を中止したことを明らかにしていました。

マケイン議員の事務所によりますと、マケイン議員は妻のシンディーさんや家族に見守られながら亡くなったということです。

■トランプ大統領「心からお悔やみ」

トランプ大統領は、これまでツイッター上でマケイン上院議員をたびたび名指しで批判してきましたが、25日、マケイン上院議員の死去の知らせを受け、ツイッターに「マケイン議員の家族に心からのお悔やみを申し上げます」と投稿しました。

■マティス国防長官「この国の最高の理想」

マティス国防長官は声明を発表し「マケイン上院議員は私たちの国に情熱的に献身し、自分のことよりも国民に奉仕することを常に実践してきた」として、その功績をたたえました。

そのうえで「われわれは、この国の最高の理想を体現する人物を失ってしまった。国防総省のすべての職員を代表し、マケイン上院議員の人生と情熱、そしてその行動に対する感謝を永遠に記憶にとどめ続ける」と追悼しました。

■トランプ政権の監視機能低下か 懸念の声

アメリカでは、トランプ大統領を批判してきたマケイン上院議員が亡くなったことで、トランプ政権を監視する議会の機能が低下するのではないかと懸念する声が上がっています。

マケイン氏は「一匹おおかみ」と呼ばれ、共和党に所属しながらも保守派とは一線を画し、時には民主党の議員と党派を超えて協力し、不法移民対策や政治資金改革の法案を提出するなど、自分の信念を貫く姿勢が尊敬を集めてきました。

一方で、トランプ大統領の外交や安全保障政策などを真っ向から批判し、去年、トランプ大統領が公約に掲げた医療保険制度をめぐる法案について「国民に質の高い保険を提供できない」として反対し、法案を否決に追い込むなど、トランプ大統領にとっては「目の上のたんこぶ」とも言える存在でした。

また、ことし11月に行われる中間選挙では、マケイン氏と同じようにトランプ大統領の政策や政治姿勢を公然と批判してきた共和党のコーカー上院外交委員長やフレイク上院議員など有力議員が立候補せず、政界を退くことになっています。

このため、有力紙ワシントン・ポストは「議会はホワイトハウスに黙って従うようになる」と伝えたほか、全国紙USAトゥデーは「マケイン氏の死去は伝統的な共和党の死だ。共和党はトランプ氏の応援団に変わってしまう」と伝えるなど、マケイン氏が亡くなったことでトランプ政権を監視する議会の機能が低下するのではないかと懸念する声が上がっています。

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NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180826/k10011594361000.html