東京オリパラ組織委員会の森喜朗会長が提案したサマータイムは、議論する余地など微塵もないのにもかかわらず、なぜか導入に向かって進みそうな気配だ。このままだと国民の大半が反対している制度が本当に実現してしまいそうなので、特に睡眠と健康という観点から断固阻止の記事を書く。

ただでさえ睡眠時間が短い日本人
 日本は世界的にも睡眠時間が短いことで知られている。中国の8割ほどだし(中国:日本、542分:442分/1日)、睡眠不足で有名な韓国(461分/1日)よりも下になってしまった。特にここ数年、他の国に比べ、日本人の睡眠時間は減っている(2014年456分→2018年442分、OECDデータ)。
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 経済と睡眠時間の関係では、睡眠時間が短いほど経済的な悪影響が出る。睡眠時間を週平均1時間増やせば、短期的には1.1%、長期的には5%ほどの生産性アップが見込まれるという研究もある。韓国がこの数年、高い経済成長(3.3%)を実現しているのは、国策として国民の睡眠不足を解消してきたからという指摘もあるほどだ。

 安倍晋三首相が、自民党にサマータイムの検討を指示したが、例によって議論を丸投げして本人はその中に加わろうとしていない。そうこうしているうちに、麻生太郎財務相が政権に批判的な新聞憎しという見当違いの理由からかサマータイム導入に賛意を示した。

 各方面から反対の声が出てきているように、日本の緯度、時間帯、生活習慣、睡眠不足、労働災害、交通事故、費用、健康影響など、サマータイム導入が及ぼす悪影響と弊害は枚挙にいとまがない。多少の省エネ効果があるというのも眉唾だし、東京オリパラが理由というのも説得力に欠け、誰も得をせず反対者も多い愚案なのは明白だ。

 だが、政官財学にわたり、日本のシステムは軌道修正や自浄作用が期待できない機能不全に陥ってしまっている。このままだと与党の太鼓持ち政治家や無謬性にだけこだわる霞ヶ関の官僚により、なし崩し的にサマータイムが導入されかねない状況だ。

サマータイムによる大きな悪影響
 サマータイムについて細かく説明しないが、昼間の時間が長い夏季に明るい時間帯を有効に使うため、その国や地域の標準時を進めることをいう。進める時間は普通1時間、長くてもせいぜい2時間だ。日照時間が短く緯度の高い欧米で実施され、南半球でもオーストラリア南部やニュージーランドで行われている。

 標準時が変わることで健康へ影響が出ることは長く研究され、最近では特にサーカディアン・リズム(Circadian Rhythm)との関係から季節の調整機能が損なわれ、睡眠障害などにつながることがわかっている。心血管疾患やメタボリックシンドローム、睡眠障害と関連疾患、老化などとの関係についての研究も多く、特に睡眠障害が健康に大きな悪影響を及ぼすのは確実だ。

2018 08/19 07:00 Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20180819-00093608/