http://www.bbc.com/japanese/39880122

米ホワイトハウスの報道官は10日、ドナルド・トランプ大統領が連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官の解任を今年1月の政権発足時から検討していたと語った。

サラ・ハッカビー・サンダース報道官は、コーミー氏に対する「信頼の低下」が昨年から始まっていたと述べた。報道官はさらに、コーミー氏が司法省内の「指揮系統を迂回(うかい)」し、「atrocities(とんでもないこと、残虐行為)」を行っていたと述べた。

政権は、コーミー氏が9日に解任されたのは、ヒラリー・クリントン元国務長官の電子メールの扱いをめぐるFBI捜査の対応が原因だとする説明を変えていない。

しかし米メディアは、ロシアが昨年の大統領選に介入した疑惑で、ロシアとトランプ氏の陣営とのつながりを捜査するコーミー氏が、司法省にさらなる人員投入などを求めていたと報じた。

米上院情報委員会はコーミー氏に対し、委員会で来週証言するよう求めている。

大統領選でトランプ陣営がロシア政府と結託していたとの疑惑を捜査するため特別検察官の任命を求める声があるものの、ホワイトハウスはそれを拒否している。

ハッカビー・サンダース報道官は特別検察官について、「必要ないと思う」と述べ、「誰よりも私たちがことの結着と完結を望んでいる」と語った。

コーミー氏は退任にあたり職員にあてた文書で、「大統領はFBI長官をいかなる理由でも、あるいは理由が全くなかったとしても、解任できる。それが私の長年の信条だ」と述べた。「(解任の)決定やその実行方法について、時間を費やしてかまけるつもりはない」。

前長官は「皆さんと一緒に仕事をするのは、自分がこれまで生きてきたなかでも大きい喜びのひとつだった。その贈り物に感謝する」と結んだ。

ロシア疑惑の捜査は?

政権を批判する人々はコーミー氏が解任されたのは、大統領選でのトランプ陣営とロシアとのつながりを捜査を指揮していたからだと主張している。

民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員(カリフォルニア州選出)とリチャード・ダービン上院議員(イリノイ州選出)は米メディア各社に対し、コーミー氏が人員増を中心とした捜査活動の増強を司法長官代理に求めていたと語った。
司法省のサラ・イスガー・フローレーズ報道官は、メディア報道を「完全な虚偽」と述べ否定した。

民主、共和両党の議員らは上下院の情報委員会がロシアをめぐる疑惑について調査を継続すると表明している。

共和党のリンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)は、もしトランプ氏がコーミー氏の解任が捜査を停止させると考えているのであれば「大きな過ちを犯している」と語った。

トランプ氏はどう反応?

トランプ氏は10日、リチャード・ニクソン大統領時代に国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏をホワイトハウスに招き、大勢を驚かせたが、その場でも、コーミー氏の解任について、「ちゃんとした仕事をしてなかったからだ」と語り、自身の決定を弁護した。

トランプ氏はキッシンジャー氏との面会に先立ち、ホワイトハウスでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とセルゲイ・キスリャク駐米大使と会談した。トランプ氏が大統領に就任してからロシア政府の高官と会談するのは今回が初めて。

トランプ氏はツイッターで、「民主党はコーミー長官について何カ月も何カ月も文句を言い続けてきた。解任されたとなると今度は悲しいふりをしている。いんちきの偽善者だ!」と書いた。

(英語記事 Trump 'considered firing Comey since taking office')

2017/05/11