ウルトラシリーズのファンなら「ウルトラ兄弟」というワードを知っていると思います。これは制作の円谷プロが考えた演出上の設定だと思っている人も多いでしょう。しかし、実は違います。

『帰ってきたウルトラマン』(以下、ジャック)放送時の1971年、学習雑誌「小学二年生」(小学館)8月号(7月発売)でゾフィー、ウルトラマン、セブン、ジャックは「血のつながった兄弟」と紹介されました。

 8月6日放送はサブタイトル「ウルトラセブン参上」、久しぶりに画面に登場したセブンとジャックの初共演に「ウルトラ兄弟だ!」と、子供たちは大興奮しました。さらに、その直後に発売された「小学二年生 夏の創刊号」には読み切りマンガ「決戦 ウルトラ兄弟対11大怪獣」(作・田口成光 え・内山まもる)という73ページの大作を掲載し、これまた大好評でした。

 ところが、その裏側でトラブルが発生していました。円谷プロは「4人のウルトラマンが兄弟という設定などしていない」と猛烈に抗議したのです。実は、「ウルトラ兄弟」という設定は雑誌編集部が創ったものでした。

 話し合いはかなりこじれたようで、結局、小学館側が「小学三年生」11月号に「ウルトラ兄弟は本当の兄弟ではない。仲が良いので4兄弟と呼ばれている」と訂正する内容を出すことで落ち着きます。ただ、逆にその設定で固まったため雑誌では「ウルトラ兄弟」というワードを使ったマンガ作品をたくさん打ち出し、徐々に定着していきます。

 すると今度は円谷プロが設定を逆利用。『帰ってきたウルトラマン』最終回で登場したバッド星人から「裏切り者のウルトラ兄弟」というセリフが飛び出します。これで円谷プロもシリーズで登場した4人はウルトラ兄弟だと認めたことになりました。

 続くシリーズ第4弾『ウルトラマンエース』第1話のサブタイトルは「輝け! ウルトラ五兄弟」。全員勢ぞろいの画面は豪華でした。エースでは全話を通してたびたび兄弟が共演しますが、会話でも「兄さん」と呼んでいます。さらに第5弾『ウルトラマンタロウ』では、ウルトラの父とウルトラの母の子供がタロウで、セブンとはいとこの関係など設定にファミリー感まで織り込みます。ちなみにテーマソングとして「ウルトラ六兄弟」(作詞・阿久悠)まで作っています。

 こんなふうに、円谷プロは途中からウルトラ兄弟という設定をいただいちゃった状態になったわけです。のちに小学館の雑誌設定で「ウルトラ兄弟とはウルトラの父のもとで兄弟の誓いを結んだ宇宙警備隊の精鋭戦士団」とされ、義兄弟であることを明確にします。たしかに、最初の「血のつながった兄弟」という縛りを円谷プロが受け入れたままだとキャラの外見の違いや物語の創作に支障が出たかもしれません。

 円谷プロの抗議から「義兄弟」と見直しが入ったことで作風に広がりが出たように思います。雑誌側のアイデアからはじまりトラブルもありましたが、結果的にはどちらにも好影響を与えたといえるのではないでしょうか。

 では、ウルトラ兄弟はいったい何人なのでしょう?

 TVシリーズは25作以上ありますし映画のみのキャラもいますが、全員が兄弟というわけではありません。初期の6兄弟はM78星雲出身ですが、レオとその弟アストラは獅子座L77星出身で最初は親戚扱いでした。

 ところが『レオ』第39話でウルトラマンキングが兄弟に推薦したため、一応「8兄弟」が成立しています。その後、平成時代からM78星雲の設定がなくなるとウルトラ兄弟というワードも消えた状態に。近年は新シリーズがスタートするたびに、昭和のウルトラ兄弟と親族関係、師弟、など関係性がバラエティになっています。

 結局、ファンのあいだでウルトラ兄弟とは、アストラまでの8人に、ウルトラマン80、メビウス、ヒカリを加えて「11人」とする説が有力なようです。古いファンからするとやっぱりウルトラ兄弟はゾフィー、ウルトラマン、セブン、ジャック、エース、タロウの「6人兄弟」がしっくりくるようですが、みなさんはどうですか?

マグミクス2022.12.16
https://magmix.jp/post/126546