マグミクス7.15
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 ゲームボーイ向けに発売された第一作目を皮切りとし、実に31年にわたって展開されてきた「聖剣伝説」シリーズ。そのなかでも評価が高く、なおかつ異色とされているのが、PlayStation用ソフト『聖剣伝説 Legend of Mana』(以下、LoM)です。今回は、7月15日で生誕23年目を迎えた『LoM』を祝うべく、同作が名作と言われるゆえんや色褪せない魅力を振り返ります。

『LoM』は「聖剣伝説」シリーズのナンバリングタイトルではなく、世界観を共有した派生作品です。プレイヤー(主人公)は「ファ・ディール」と呼ばれる世界の住人で、夢の中に現れた「マナの女神」に誘われ、未知にあふれた冒険へと出発することになります。メインストーリーは1本のみならず、複数のシナリオが組み合わさって全体像が見えてくるオムニバス形式を採用。「ドラゴンキラー編」「エスカデ編」「宝石泥棒編」の3本を核としつつ、シナリオごとに各キャラクターの個性がしっかり描かれていました。

 また「聖剣伝説」シリーズと言えば、「ラビィ」のようにアニメ調のかわいらしいモンスターをはじめ、親しみやすいキャラクターデザインなどでおなじみですが、『LoM』はそれまでのシリーズタイトルと一線を画すビジュアルが特徴的です。1999年当時は3DCGを多用したゲーム作品が市場で脚光を浴びていたものの、同作は「聖剣伝説」シリーズのテイストを損なうことのないよう、繊細なドット絵でデザインを構築。まるで童話の世界に入り込んだかのごとく、それでいて幻想的な世界がプレイヤーの眼前に広がっていたのです。

 そして『LoM』の大きな特徴とも言えるのが、自分自身の手で世界を作り上げる「ランドメイクシステム」です。こちらはその名の通り、プレイヤーの行動(アーティファクトの設置)によってゲーム内ワールドに拠点やダンジョンが構築されていくシステム。まっさらのワールドマップに一から世界を組み上げ、生み出した大地を歩みながら物語も紡いでいく独特の気持ちよさは、まさしく唯一無二。『LoM』が「聖剣伝説」シリーズ中の異色と言われるゆえんでもあり、同作における最大の見どころと言っても過言ではないでしょう。

 基本的なシステム周りの一方、『LoM』には奥が深すぎる各種クラフト(作成)要素も存在します。例えば戦闘時にプレイヤーを助けてくれる「ペット」や「ゴーレム」の育成をはじめ、原材料を加工して新たな武器を生み出す「武器・防具」作成……などなど、いずれも攻略 情報がなければ完全に理解するのが難しいほどやりこみ度満点。その反面、クラフト要素を突き詰めなくてもクリアできるバランス調整が施されており、「一から十までガッツリ遊びたい人」と、「世界観に浸ってストーリー中心に楽しみたい人」の両方が満足できる仕上がり具合が見事な一作でした。

 発売から23年目を迎えた『LoM』ですが、2022年10月からはTVアニメの放映がスタートします。アニメ版では島崎信長さんや早見沙織さんといった声優陣らが出演し、ゲーム版の宝石泥棒編を題材にしたストーリーが描かれます。アニメ放映前の予習を兼ねつつ、未体験の方や同作の経験者もリマスター版などを手にとってみてはいかがでしょうか。

(龍田優貴)