マグミクス11.28
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『デスノート』『るろうに剣心』『キングダム』など、興行面でも批評面でも成功を収めた実写化作品がある一方で、ファンからも評論家からも批判の声が多くあがった作品や、シリーズ化するつもりが興行的に振るわず、後が続かなかった作品も少なくありません。

ならば逆に、残念な結果に終わった実写化映画に、光り輝く部分は全くなかったのでしょうか。今回は、大手映画レビューサイト「Filmarks」で平均点が3.0未満(5.0満点)と、評価が低めな実写化映画から3作品を選び、評価に値する魅力を掘り起こしたいと思います。

●『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』2部作
2021年に完結した大人気マンガ『進撃の巨人』を2015年時点で実写化した作品です。『下妻物語』『告白』の中島哲也監督が企画を進めていたものの降板、その後「平成ガメラ」シリーズの特技監督である樋口真嗣氏が監督を務めます。

完成した映画は2部作ともヒットはしたものの、俳優の演技がかみ合っていない、原作にない謎設定やオリジナルキャラがいる、後編で明かされる謎が飲み込みづらいなど、さまざまな点が批判の対象になりました。

しかし、映像のスケール感と特撮のクオリティは評価すべき点です。まず「軍艦島」でのロケも含めた広大な「ウォールマリア」内部の世界観の見せ方は実写とCGの境目も目立たず、しっかりと説得力があるものになっていました。

そして、冒頭で出現した超大型巨人による壁の破壊、それによってなだれ込んできた中型巨人たちによる人間大殺戮の絶望感や、前編終盤でエレンが覚醒して巨人化し敵巨人たちをつぎつぎと惨殺していくバトルシーンの迫力は、忘れがたいものがあります。

PG12のギリギリを攻めた残酷表現や巨人たちの気持ち悪さなど、邦画のなかではかなりの規模の大作でありながら、いい意味での「悪趣味さ」を失っていない点も評価できるでしょう。

●『BLEACH』
週刊少年ジャンプの人気マンガの映画化で、『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』を成功させてきた佐藤信介氏が監督ということもあって期待を集めていた作品ですが、興行的には5億円程度、おそらく制作費や宣伝・公開の規模から考えると失敗作になってしまったと思われます。なぜか原作と髪型が違うルキアをはじめとする主要人物の演技や、原作8巻あたりまでの内容を駆け足でまとめた脚本なども批判の的になりました。

ただ、邦画界ではCGとアクションに定評のある佐藤監督だけあって、クライマックスの駅前での一護vsグランドフィッシャー戦、その後の阿散井恋次&朽木白哉との剣戟の迫力はかなりのクオリティでした。実写とCGの融合は違和感がなく、恋次役・早乙女太一さん、白哉役・MIYAVIさんの身のこなしやビジュアルについては原作を読んでいた方も満足したのではないでしょうか。

物語がいっそう盛り上がる「尸魂界(ソウル・ソサイエティ)編」まで描いていたら尺も予算も足りなかったでしょうから、「死神代行編」までで終わらせたのも妥当な判断だと思いますが、2021年現在も実写版で続編は作られるという情報はなく、もったいない限りです。

●『あしたのジョー』
ボクシングが題材なので前述の2作よりは現実的で作りやすいはずですが、思い入れが強いファンも多い名作だけに、実写化のハードルは高かったのではないかと思われます。

完成した映画は11億円とそこそこのヒットとなりましたが、公開当時から現在に至るまで、評価はいまいちです。あまりにも「まんま過ぎる」丹下段平役の香川照之さんはさておき、なぜか白木洋子がドヤ街出身、マンモス西が最初からただのサポート役になっているなど、映画ファンとしても原作ファンとしても戸惑う部分が少なくありませんでした。

しかし、メインであるジョー役の山下智久さんと力石役の伊勢谷友介さんの肉体改造には観客誰もが驚いたのではないでしょうか。特に、原作通りフェザー級からバンタム級への転向のために無茶な減量をする力石を、CGも使わずに再現した伊勢谷さんの狂気的な役作りは凄まじく、画面越しにも異様な雰囲気を放っていました。説得力を伴ったふたりの俳優の肉体がぶつかり合う最後の試合は一見の価値ありです。

マンガ原作の実写映画は、時には熱心な原作ファンから「そもそも作る必要がない」というスタンスの批判があがるほど、批判にさらされやすい企画です。それでも、実写化作品はどんどん作られ、来年2022年だけでも『ホリック xxxHOLiC』や『嘘喰い』、『おそ松さん』などの公開が予定されています。観る側は「マンガはマンガ、映画は映画」と割り切って楽しむのがちょうどいいのかもしれませんが、好きな作品だとなかなかそうもいかないのが現実でしょう。
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