コンピューターゲームの腕前を競う「eスポーツ」。大手コンサルティング会社も事業に参入し、ゲーム業界の外へとビジネスチャンスの広がりも見せ始めた。国内でも優勝賞金が1億円を超える大会が開催されるなど話題性も手伝って、認知度も高まりつつある。果たして市場拡大の勢いは本物なのか? 普及元年になる1年の幕が上がった。

 ■専門部署立ち上げ

 PwCコンサルティング(東京都千代田区)は昨年11月、eスポーツ支援を専門とする「eスポーツ事業推進室」を設立した。プロチームの立ち上げに向けた事業企画から、選手の引退後のセカンドキャリア支援まで手掛ける。

 eスポーツ関連ビジネスへの参入を目指す企業に対して、大会やチームの運営をサポートするほか、選手の募集や採用をアドバイス、大会の賞金獲得やグッズ販売など収益化の計画を立てる。

 データ分析のノウハウを活用した選手育成やゲームの戦術アドバイスなども行う。人工知能(AI)を使って実際の競技を分析、選手の技術やゲームで勝つための戦術を高める。桂憲司常務執行役員は「eスポーツでは男女や身体障がい者など、いろいろな人の垣根を越えられる」と社会的意義を強調、「ビジネスとしても力を持っている」と語る。

 ■市場規模は前年比13倍

 昨年12月には、国内大会として史上最高額となる優勝賞金100万ドル(約1億1000万円)をかけた世界大会も開かれた。主催したのはサイバーエージェントのゲーム事業子会社サイゲームス(東京都渋谷区)。サイゲームスのスマホ向け人気カードゲーム「シャドウバース」で競う個人戦で、日米仏中などから24選手が出場。日本人選手が優勝した。

 これまで国内開催のeスポーツ大会で優勝賞金の最高額は3000万円。昨年7月には、ミクシィが人気のスマホゲーム「モンスターストライク」の大会では、賞金総額は6000万円に上り、高額化の動きが続きそうだ。

 ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するGzブレインの調査によると、eスポーツの平成30年の国内市場規模は前年比13倍の48億3千万円に急拡大したという。昨年2月にeスポーツの業界団体、日本eスポーツ連合(JeSU)が発足して、プロライセンスの発行が開始されたことなどが後押しした。

 内訳はチームや大会へのスポンサー料や広告費が75・9%を占めるが、スポーツ興行の主な収益となる放映権が8・4%、有料の観戦チケットなどが5・5%となっていることも見逃せない。大会観戦や動画視聴者の経験者数は30年には382万6000人に拡大。34年には785万5000人に達し、国内の市場規模は約100億円に成長するという。

 ■将来設計も支援

 鍵を握るのは若年層への普及だ。特にゲーム産業は、若年層を中心に発展してきた一方で、“依存症”といった教育上の悪影響があるとの批判にさらされてきた。若年者の活動には親世代への理解が不可欠で、参入各社は若手選手の将来設計に腐心している。

 PwCでは、eスポーツ選手はITと親和性が高く、パソコンの操作になれている人材が多いと分析。選手活動を引退したあとは、人手不足が深刻な情報セキュリティー人材としての活躍が期待できると強調する。

 就職に向けたインターンシップや研修のサービスを提供する計画で、桂常務執行役員も「市場を長い目で育てていく必要がある」と指摘する。ミクシィは学業との両立が可能となるように、若年者向けに大学進学などの奨学金を賞金にした大会を検討している。

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