アニメをテコにゲーム事業の収益力を底上げする動きが加速している。バンダイナムコホールディングスのグループ会社は人気スマートフォン(スマホ)ゲームを相次ぎアニメ化、ミクシィもアニメ映画の制作を強化している。アニメをきっかけに、ゲームをより深く楽しんでもらい課金につなげる狙いだ。アニメ制作によって高い広告宣伝の効果を引き出し、投資効率を高めたいとの判断もある。

バンナムHDのグループ会社が手掛けるスマホゲーム「アイドリッシュセブン」。7月、このゲームから飛び出したキャラクターが活躍するテレビ番組の2期目の放映が決まった。

2015年の配信からゲームのダウンロード数は200万以上に達し、主人公の人物像や世界観をそのままに、同社などが1月からアニメを放映したところヒットにつながった。バンナムは「アイドルマスター」でもアニメからゲームにファンを誘導。収益を底上げしている。

ゲームのアニメ化に力を入れる企業はほかにもある。ミクシィは15年にスマホゲームの「モンスターストライク」をアニメ化。その後、人気は衰えずゲームの累計利用者数が4500万人に達するなか、5日には第2弾となる劇場版のアニメが封切りになった。サイバーエージェント子会社のサイゲームスもアニメ事業を手掛ける専門会社を設立するなど取り組みが相次ぐ。

各社がアニメ化に取り組むのは、興行や広告収入だけでなく、課金制のゲームで獲得したファンがよりキャラクターなどに愛着を持つからだ。ゲームによってはキャラクターの個性や物語性が十分表現しきれないが、アニメではゲームの世界観や人物像を豊かに作り込める。アニメを通して満足度が高まればゲームへの熱意や関わりが高まり、長い間ユーザーとつながることができる。

「広告や販促に莫大な予算を投下できるタイプのゲームタイトルの場合、その一部をテレビアニメなどの制作に回すことでゲームそのものの収益効果を上げられる」(アニメプロデューサーでアーチ社長の平沢直氏)との見方も多い。平沢氏によると、一般的にゲームは年間売上高の7〜15%を広告、販促費用にかける。例えば月間10億円の売上高だと年間15億円程度は広告販促に投じられるが、この予算を原資にアニメを制作できるという。

近年、米ユニティーテクノロジーズが開発した「ユニティー」などゲーム開発ソフトでアニメを簡易に作り込める環境になっていることも制作を後押ししている。広告宣伝で新規ユーザーを獲得するよりは、ゲームの固定ファンをアニメを通して一段と引き込んだり、スマホなどに慣れ親しんだ10〜20代にアニメを配信し愛着を持ってもらった方が費用対効果が高いというわけだ。


アニメジャーナリストの数土直志氏は「(企画開発から配信までを一気通貫で手がける)ゲーム業界は『タテ型』だが、制作委員会方式で『ヨコ型』のアニメ業界との融合が進むのでは」とみる。日本のアニメ産業の世界シェアは10%弱と内需型だが、ゲーム業界は20%強と相対的に海外進出が進んでいる。アニメもゲームとの融合が進むなか、「海外市場主導で成長する可能性がある」(数土氏)。

オランダの調査会社ニューズーによると、世界のゲーム市場は21年に17年比1.5倍の1801億ドル(19兆8千億円)と高い成長が続く見通し。この成長にはゲームのアニメ化も一役買うとみられている。ゲーム市場の余勢を駆ってアニメ産業も勢いづけるか注目だ。

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日本経済新聞
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