現代独特のもの、そして日本発のものとして語られることの多いオタクカルチャー。

でも、「17世紀のイギリスにも、二次創作の文化が存在した」なんて聞くと、びっくりしませんか?

今回取材したのは、「17〜18世紀イギリスにおける、シェイクスピアの女性ファン」
を研究なさっている東大卒研究者・北村紗衣先生。

北村先生は東大の教養学部・表象文化論学科で、学位・修士号を取得したのち、

イギリスのキングスカレッジロンドンにて、「17〜18世紀にシェイクスピア劇を楽しんでいた女性たちの歴史」をテーマに博士論文を執筆・博士号を取得され、今年(2018年)には同テーマでの一般書も刊行されています。

(中略)

■7世紀のファン魂

編集部:先生が見つけられた昔の女性ファンの慣習って、何か他にありますか?

北村先生:慣習というほどではないんですが面白い話だと、

シェイクスピアのお芝居を見るのが好きな女の人が、「田舎の方に遊びに行ってしまったために、ロンドンで上演されていたお芝居が観に行けなくて悲しい。フラストレーションが溜まったので、家で本を読んで我慢した」という話がありました。

編集部:なんかかわいい(笑)

北村先生:私も昨日、堂本光一の『ナイツ・テイル』のチケットを取りに行ったんですけど、やっぱり堂本光一が出演するお芝居って、チケットが取れないことがまあよくあるんですよ。

そういう時って、やっぱりみんな原作読んだり、堂本光一の出ている番組を見て我慢したりするんです。ファンは結構そういうことをするんですよね。

現代において、ジャニーズとか2.5次元のファンがやっていることって、実は21世紀の特殊なことではなくて。17世紀、18世紀の時から、ファンは現代と同じ精神を持って、コンテンツを見ていたんですよ。

編集部:17世紀から現代まで、オタクの精神は変わらないんですね。

北村先生:そうですね。あとは17世紀のお芝居が好きな人たちって、元々あるお芝居を真似したり題材にして、自分でも書く人が多かったんですよ。もうこれは二次創作ですよね。

編集部:へえ〜!でも、二次創作でお芝居を書く人って現代はあまりいない気がしますけど、当時はそんなにポピュラーだったんですか?

北村先生:現代の日本だとお芝居よりも小説の方がメジャーな娯楽として広まっているのでわかりにくいかもしれませんが、

17世紀のイギリスでは識字率が低いこともあって、お芝居の方が多くの人々に親しまれていたんです。当時のロンドンの、人口に対する劇場の数って、他のヨーロッパの都市と比べても多いんですよ。

だから、文章が書ける人って、17世紀のイギリスだと大体詩人か劇作家を目指したんですね。現代の日本だったら「小説を書いてみよう」と思うような人たちが。

編集部:詩人とか劇作家って、なんとなく高尚な芸術家っていうイメージがありますが…。当時は「何かを創作したい」と思う人が手っ取り早く始められる表現方法だったんですね。

北村先生:そうです。ただ、当時はプロの演劇だと、役者は男性のみだったんです。女性がプロの役者になることはほぼ不可能でした。

でも、アマチュア演劇なら、女の人もできるじゃないですか。それで、役者をやりたい女性が自ら脚本を書いて自分も演じて、その家族や親戚も混じってみんなで劇を作って、ということもあったみたいですね。

編集部:え、お芝居って家族も混じって上演していたんですか?現代の二次創作だと、「作品を家族に見せるのは恥ずかしい」みたいな風潮がある気がしますが。

北村先生:まあお芝居ですから、小説や漫画よりも、こっそりやるのは難しいというのはあると思います。

ただ、18世紀のことですが、「娘や孫娘たちが性描写があるお芝居を家でやろうとしたら、いざ上演という時に、一家のおばあちゃんがエロい箇所を全部カットしちゃった」なんてことがあります(笑)

編集部:おばあちゃんが参加するお芝居に性描写があるものを選ぶ女性たち、大物すぎでは?

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