作者らに無断で漫画を公開する「海賊版」ウェブサイトへの対策を検討する実証実験が、8月から行われている。長年にわたり海賊版問題に取り組んでいる漫画家の赤松健さん(50)が、自身が運営に関与する漫画配信サイトで実施しているもので、1年をめどに実効性などを判断する。

■データ提供者にも報奨

 実験は、絶版漫画などを配信するウェブサイト「マンガ図書館Z」で行われている。同サイトは、赤松さんが取締役会長を務めるJコミックテラス(東京都千代田区)が運営。「マンガ・書籍を海賊版から守ろう!」と、実験のパートナーである実業之日本社(東京都港区)の絶版漫画について電子化データの提供を呼びかけている。

 作者もしくは書籍を所有する読者に、手元にある書籍を電子データに変換してもらうことを想定しているが、海賊版サイトでみつけたデータの提供も受け付けるとしている。

 提供者にはインセンティブ(報奨)を支払う。集まったデータを公開する際、広告を掲載する予定で、その広告収入の一部を原資とする。具体的には、80%を作者らに、10%を出版社に、残る10%をデータ提供者に分配する。

■リーチサイト

 無断でデータ化された漫画(海賊版)を、不特定多数の利用者が読めるようにしたサイトが海賊版サイトだ。

 著作権保護の観点などからすでに20年以上前に問題視されていたが、この数年で散在する海賊版の所在を集約して案内する「リーチ(誘導)サイト」が登場し、問題がクローズアップされたのが昨年だった。

 なかでも「漫画村」(4月以降接続不能になっている)というサイトは、発売直後の漫画など約7万点を無料で読めたことなどから接続遮断などの措置も一時は検討された。

 しかし、講談社が漫画村は「氷山の一角」と指摘する声明を出すなど、類似のサイトが多いことから、政府や関係団体は引き続き対策を講じている。

 今回の実験もそうした動きの一つだが、赤松さんは「20年以上にわたるイタチごっこに終止符を打つのが目標」と考えており、抜本的な対策まで視野に入れたものにしたい考えだ

■悪魔の力

 赤松さんは、海賊版サイトを「漫画家にとっては、たまったものではない」と断じる一方で、使い勝手の良さなどサイトとしての作りには注目した。その結果、「使い勝手のよいサイトがあれば、わざわざ海賊版を使う人はいなくなる」という結論に至った。

 「『漫画村』がやっていたことを、(法や倫理に反しない形で)全てやるつもりです。悪魔の力を使って、悪魔を倒す。(永井豪さんの漫画)『デビルマン』の発想です」

 今回の実験を、その構想の実現に向けた第一歩に位置づける。

 実験の間、収益化が見込めるかなど見極めるが、最終的には「大手の出版社とも協力し、全出版社の漫画を読めるプラットホームを作りたい。絶版本だけではなく新刊もそろったサービスを目指す」という。

 赤松さんは「作者にも、出版社にも、データ提供者にも報奨が出る。読者もさまざまな漫画を無料で読める。誰も損をしない。海賊版サイトで漫画を読む人たちをこちらに引き込み、正しく収益化すべきです」と“合法漫画村”の利点を力説する。

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