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日曜朝の少女アニメ『Hugっと、プリキュア』が、大人たちを魅了している。
なぜなら、美少女戦士のプリキュアが挑む敵の組織が、まるで今の日本の大企業そのものなのだ。
この組織は、クライアス社(暗い明日社)という。
未来を奪うことをミッションとする巨大企業なのだが、
そこで働く、やり手のイケメン男子が、プリキュアの敵だ。
彼は、おじさん社員のネガティブパワーを増大し、怪物「オシマイダー」を出現させる。
この「オシマイダー」は、プリキュアのハートエネルギーを注入されると、倒されてしまうんだが…、
その際に発する台詞が、「やめさせてもらいまーす」。駒のように扱われる悪の組織から、去っていくというオチなのだ。
このクライアス社は、ブラック企業を揶揄したように見えるのだが、実際には、日本の優良企業を象徴している。
社内を観察してみると、しっかりとガバナンスが効いている。
怪物「オシマイダー」を出現させるのは、担当者の勝手にはいかず、「決裁」が必要。
その決裁印はひとつだけなので、かなりフラット化された組織である。
その後、商品である「オシマイダー」を「発注」するのだが、納品されるまでは、ほんの数秒。
つまりサプライチェーン・マネジメントがしっかり実現されていることがわかる。
このように結構、デジタルトランスフォーメーションが進んだ企業なのである。
しかし、こうした企業が、悪に落ちていくのは、なぜなのか?
チャート化してみたら、腑に落ちた。

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あくまでも冗談でつくったチャートなのだが、話の種に、あなたと共有しておきたい。
そもそも成熟業界にある大企業は、チャートの右下「恐竜」セグメントにいることが多い。
「恐竜」は、昭和時代からの企業戦士がつくった文化が根強く留まるため、
自らの理解を超えた異質なもの、すなわち新しい技術導入を拒絶する。
マーケティングオートメーションにしても、導入後1年経っても、部署間の連携ができず、メールの一通も出せない企業が多い。
こうした企業は、遅かれ早かれ、未来についていけず、いずれ社員は「離散」し、絶滅する(チャート左下)。
こうした恐竜企業であっても、ビジョナリーなリーダーが現れた場合、
若手も出世できるように成果主義を導入。ITインフラを整備しながら、なんとか成長を維持するのだが、しかし…、
企業文化自体が、高度成長期のままで変わることがなければ、
成長が加速すればするほど、社員は息苦しくなり、結局「離散」していくことになる。
要は、旧来の価値観のうえに築かれた企業文化を変えることなく、テクノロジー導入を加速化すれば、
組織はバラバラになっていく。これが、クライアス社の実態だ。

それに対して、プリキュアの戦士たちは、実にポジティブ。
「なんでもなれる、なんでもできる」と信じて疑わないベンチャー企業のようだけれど、
「明日は、明るいか?」といえば、そうではない。あるのは希望だけ。
新しいものをスピーディにとりいれることは得意だが、
個性重視の、自由な企業文化なので、組織力が発揮できずに、創業4年後あたりで分裂の危機を迎える。
つまりクアイアス社とプリキュアの、どちらにも共通する問題は、
未来へ向かう具体的なビジョンが描けておらず、またその実現を促す新しい組織と、雇用体制が見出せていない。
クライアス社が、未来が見えないから、他者から未来を奪おうとする。
プリキュアは、未来を奪おうとする敵がいることによって、一時的にまとまっているだけ。
もしも、この物語の作者の意図が、
「希望はもてないが、利益があがる大企業」と「希望はもてるが、利益があがらないベンチャー」という
両極端同士が戦うことで、未来に似合う組織へと統合・構築されて、
「爆発」的に成長する企業が生まれる道筋を描いたものと考えたとしたら ——、
この物語を見ながら育った少女は、
プリキュアのような希望を抱き続けられると同時に、クライアス社のような統率力をもった
新しい組織(チャート右上)を作りあげることになるのかもしれない。

イカソース
https://comemo.io/entries/5592
関連ソース
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27017060W8A210C1H52A00/