6月18日 5時28分
フランスで開かれていた、世界のアニメーション映画を集めた国際映画祭「アヌシー国際アニメ映画祭」で、湯浅政明監督の「夜明け告げるルーのうた」が長編部門の最高賞にあたる「クリスタル賞」を受賞しました。
日本人の作品が最高賞を受賞するのは、2008年に短編部門で受賞した加藤久仁生監督の作品「つみきのいえ」以来、9年ぶりで、長編部門では1995年に受賞した高畑勲監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」以来、22年ぶりの快挙になります。
また、片渕須直監督の「この世界の片隅に」が審査員賞を受賞しました。
「夜明け告げるルーのうた」とは
湯浅政明監督の「夜明け告げるルーのうた」は、監督も脚本に関わって製作したアニメーション映画です。映画は、両親の離婚に伴って寂れた漁港の町に引っ越してきた男子中学生が人魚の女の子と出会うことで、それまで他人に対して閉ざしていた心を徐々に開いていくというストーリーです。

製作は、全編で「FLASH」というコンピューターソフトを使って行われ、デジタル技術を駆使することで手書きの風合いを残しながらも通常の3分の1の人数で映画を完成させました。

湯浅監督は大学を卒業後、アニメーション製作会社でテレビアニメ「ちびまる子ちゃん」などの作品に携わり、その後フリーとなって「劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ」などの製作を行ってきました。平成16年には、アニメ映画の監督として初めての作品、「マインド・ゲーム」で多くの賞を受賞し、ことしは「夜は短し歩けよ乙女」と「夜明け告げるルーのうた」の2本の長編映画を続けて公開して注目されました。
「この世界の片隅に」とは
「この世界の片隅に」は、戦時中の広島や呉を舞台に厳しい生活の中でも明るさを忘れない主人公の女性と家族の日常を描いたアニメーション映画です。映画は、片渕須直監督が集めた写真などの膨大な資料に基づいて当時の町並みや人々の生活が描かれてその細かい映像や音の表現が高く評価され、日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞など数々の賞を受賞しています。

また、主人公の女性の声を俳優ののんさんが演じたことや、インターネットを通じて一般の人から資金を集める「クラウドファンディング」という仕組みを使って映画の製作費用を集めたことでも話題となりました。

片渕監督は大学時代に宮崎駿監督と出会い、平成8年にテレビアニメ「名犬ラッシー」で監督としてデビューしました。国際的な賞を受賞したアニメーション映画「マイマイ新子と千年の魔法」やNHKの復興支援ソング「花は咲く」の短編アニメーションなど、数々の作品を手がけています。

片渕監督は以前、NHKのインタビューで「戦争の時代は、本当はこうだったのだと調べ直して正確に伝えようと、画面に映っているものが中途半端ではいけないという思いで製作を続けてきました」と話していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170618/k10011021601000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_002