<刀剣乱舞>秘蔵っ子信濃藤四郎 展示が人気


ゲームとの共同企画で女性ファンの人気を集める刀剣展=14日
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 山形県鶴岡市の致道博物館が人気ゲーム「刀剣乱舞−ONLINE−」の製作会社の協力を得て開催している「刀の教科書展」が、「刀剣女子」と呼ばれる大勢の女性ファンでにぎわっている。
キャラクターのモチーフになった実物の名刀が並ぶと評判になり、人気に火が付いた。酒井忠久館長は「ゲームを入り口に日本刀の魅力に触れてもらい、刀剣文化の振興につなげたい」と歓迎している。

 4月29日に始まった同展は、平安時代から明治時代までの名刀計約40振りを展示。同館所蔵の国重要文化財「信濃藤四郎」と、期間限定で並ぶ「五虎退(ごこたい)」「乱(みだれ)藤四郎」の短刀3振りは人気キャラクターのモチーフになっており、女性ファンの熱い注目を集める。
 ゲームのマスコットキャラクターが「一日館長」を務めた今月14日は、開館前に200人超が並んだ。友人2人と訪れた新潟県燕市の女性会社員(46)は「歴史は苦手だが、ゲームがきっかけで刀剣の世界に興味を持つようになった」と目を輝かせていた。
 6月8日までの期間中はゲームとのコラボ商品販売やキャラクター等身大パネルの設置場所を巡るスタンプラリーもある。
 博物館は、昨年秋に開いた「出羽庄内藩酒井家ゆかりの名品」展でも、同ゲームとの共同企画を実施。全国から刀剣女子たちが集まり、来館者は1カ月の展示期間としては異例の1万2500人を記録した。
 ゲームのキャラクターデザインなどを担った製作会社「ニトロプラス」(東京)の小坂崇気社長は「刀剣乱舞は日本の奥深い刀剣文化があってこそできた。刀剣ファンが増えることで日本刀の保護・継承に結びついてほしい」と期待している。

◎庄内出身2人保護に尽力 刀剣文化現代に伝える

 致道博物館がある庄内は刀剣文化と切っても切れない縁で結ばれている。太平洋戦争後、駐留軍が国内の刀剣を没収しようとした際、美術・工芸品としての価値を主張し、その保護に力を尽くしたのが、庄内出身の2人(ともに故人)だった。
 2人は酒田市出身の本間美術館初代館長、本間薫山(本名・順治)氏と、鶴岡市生まれで新刀研究の権威として知られた佐藤寒山(同・貫一)氏。
 国立博物館(現・東京国立博物館)などの職員だった2人は連合国軍総司令部(GHQ)の幹部と交渉、方針撤回につながった。2人は「日本美術刀剣保存協会」(東京)の設立に尽力するなど、刀剣の保護や刀剣製造技術の継承に力を注いだ。
 本間氏は後に協会の第2代会長に就任、佐藤氏も常務理事などを務めた。刀剣界で両氏は「両山」と称され、協会が運営する刀剣博物館に銅像が立っている。
 その協会の第10代会長に昨年8月、致道博物館の酒井忠久館長が就任した。来年1月には新しい刀剣博物館が墨田区に開館する。
 酒井館長は「日本刀は武器でありながら、信仰の対象や美術品として扱われてきた。刀剣文化を守り、魅力を幅広い世代に伝えていくのが私たちの責任となる」と話す。

【刀剣乱舞】2015年にオンラインゲームとして配信開始。実在した太刀や短刀、やりなどを擬人化したキャラクターを育てて敵を倒していくシミュレーションゲーム。若い女性中心に人気を呼び、ダウンロード数は500万に迫る。ミュージカルやアニメにもなった。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201705/20170518_53034.html