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新井一の「シナリオの基礎技術」より(これは有名すぎて説明不要だろ?)

38P、「テーマ」と「起承転結」の関係について

ここに一つ、手紙の例をあげてみましょう。
東京へ出て働いている人が、どうも生活費が足りない。
郷里のお父さんから、五万円ばかり送ってもらおうという気持ちになりました。
そこで郷里のお父さんに手紙を書きます。まず、気候のあいさつから始まって、
自分は東京で働いているばかりでなく、将来に向かってすすむためにシナリオの勉強をすることになったと近況を書き、
さらにそのシナリオ研究は大変有望で、必ず二、三年のうちに有名なシナリオライターになって、
全国に自分の名が売れるかもしれない。先生も見込みがあるといってくれている。
そんな矢先、勤め先の会社で配達をしているとき、雨にうたれて風邪をひき、
それをこじらせて、たったひとり下宿で寝ている。窓からは桐の木が見えてうちの庭が思い出されます。
さて治療代が案外かかり、五万円ばかり足りなくなったので、何とかならないだろうか。
いつもこんなことをいって済まないと思っている。お母さんも寄る年なみだから身体に気をつけて欲しい。

というような手紙を書いたとします。これは五万円ばかり送ってくれ、という目的があった訳です。こういう目的がなかったら、近況で終わってしまうでしょう。

(中略)
もしこの手紙を起承転結でいうならば、最初のあいさつは<起>です。そして現在の近況、普段シナリオを勉強していることを知らせるのが<承>です。
そして、苦学をしているために風邪をこじらせて寝ているということが<承>として<転>に向かって、どんどんせりあげています。
そして、五万円下さいというのがテーマ、お母さんのこっを気づかうのが<結>ということができましょう。
こんな手紙でさえ、何を書くかという目的がなければ書けないのです。