岩手県で初の新型コロナウイルス感染者となった盛岡市の40代男性に対する誹謗(ひぼう)中傷、個人を特定しようとする動きが過熱している。
国内唯一の感染未確認県だったことで全国から注目されており、県は公式ホームページ(HP)などで冷静な対応を呼び掛ける。

 男性が勤める県内の事業所は、7月29日午後11時すぎにHP上で社員の感染を公表した。
インターネット掲示板で社名が取り沙汰されてアクセスが集中し、30日夜にサーバーがダウンした。
 31日までに、県内外から100件近い電話やメールが殺到。「感染した人間はクビにしたのか」
「従業員の指導がなってない」といった本人や会社を攻撃する内容が多かった。

 会社の担当者は「誹謗中傷の電話は業務に支障を来しかねず、従業員の不安をあおる。『岩手第1号』ゆえに全国的な注目を集めていると感じる」と語る。
 風評被害も深刻で、濃厚接触者以外の従業員の家族が、勤務先から検査を求められるなど、過剰な反応が目立つという。

同社では濃厚接触者以外の従業員も全て在宅勤務に切り替え、対策を講じている。「誰もがかかる可能性がある感染症だと認識してほしい」と訴える。
 県は31日、HPや会員制交流サイト(SNS)で「差別・偏見・誹謗中傷はやめよう」と発信した。

 これまでも「第1号になっても責めない」と繰り返してきた達増拓也知事は、同日の定例記者会見で、県としてデマや中傷に厳しく対応する姿勢を示した。
 「誹謗中傷は犯罪に当たる場合がある。犯罪抑止、犯罪への対応という観点で厳格に臨む」と強調した。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200801_33010.html