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 一審、控訴審とも「プロジェクト開発契約に付随する義務」に違反する行為の有無が争点になった。開発ベンダーがプロジェクトを適切に管理する「プロジェクトマネジメント(PM)義務」や、ユーザー企業が仕様の策定など
で開発ベンダーに協力する「協力義務」などだ。

 協力義務については一審、控訴審とも旭川医大の義務違反を認定した。仕様の凍結に合意した後も追加開発を繰り返し要望したほか、マスターデータ作成の協
力姿勢が不十分だったことなどが、ユーザー企業としての協力義務違反に当たるとした。

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 異なったのはPM義務に関してだ。札幌高裁は、旭川医大が出した追加開発の要望に対するNTT東の対応に違反はなかったと認めた。

 一審の旭川地裁判決は、追加開発の要望を受け入れて開発が遅延すると予測できる場合、「(仕様凍結の)合意を理由に拒絶する」(同判決)か、代替案を示す
などして「開発要望を取り下げさせるなどの対応を取るべき」(同)とした。そのうえで追加開発の要望を受け入れたNTT東の姿勢を「原告(本誌注:旭川医大)の追加開発要望に翻弄され、進捗を適切に管理できなかった」(同)とし、PM義務違反を認定した。

 この判決に納得がいかないNTT東は控訴審で反論。旭川医大の担当者から「追加の要望を反映しないシステムは検収で合格させない」と迫られたとし、「判決
のような(追加開発を拒絶する)対応は非現実的だ」と主張した。

 札幌高裁はNTT東が採った次の2つの対応を根拠に、同社の対応にPM義務違反はなかったと認めた。

 1つはNTT東が2009年3月以降、旭川医大に対し、同医大が要望する追加開発の多くは仕様外であり、追加開発をすればシステムの稼働が予定日に間に合わ
なくなると繰り返し説明していたこと。もう1つは2009年7月に、NTT東が同医大の追加要望を受け入れる一方、「旭川医大は今後一切の追加要望を出さない」とい
う仕様凍結の合意を取り付けていたことだ。

続く