昔、研修のために在籍していた病院に、左胸を刺された女子高生が運ばれてきた。
顔も手も腕も血まみれで、制服の白いブラウスは本来の色が分からなくなるくらい、袖も襟もボタンまでもが血でグチャグチャに染まっていた。
救急隊が現場に到着した時点で、既に心肺停止状態で、かなりの出血をきたしていたらしい。

処置室に収容し、制服を剥ぎ取って直ちに心臓マッサージを施したんだが、当初は胸の傷口からの新たな出血がほとんどなく、自分はひょっとして大血管の損傷はないのでは、出血の原因は肺の損傷に起因しているのではと思った。
ところが、急速輸血を行うためナースがポンピングを開始した直後、傷口から血がドバッと噴出してきた。
たったいま輸血した血が、流れ出ていると気づくのに数秒かかった。心臓か、心臓付近の肺動脈を損傷していることは明らかだった。
結局、程なくして蘇生を断念せざるをえなかった。

自分はほとんど傍観していただけだったが、心臓マッサージで胸を押した瞬間に噴出した血は、今でもトラウマになってる。