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新型コロナウイルスの感染者を病院や宿泊療養施設に全員入れる兵庫県の目標「自宅療養ゼロ」が揺らいでいる。感染拡大ですぐに入院・入所先が見つからない「自宅待機者」が急増。実態と大きくかけ離れ、見守り対策を強化せざるを得ない状況だ。県は依然、方針を堅持しているが、保健所を抱える各中核市も現場の対応を優先し、県方針から距離を置いている。

■巡回強化「現場判断を優先」

 重症化リスクの高い感染者が入院できないのは「自宅療養ゼロ」方針があるからでは−。18日の会見で問われた井戸敏三知事は眉間にしわを寄せて反論した。

 「若者を自宅療養と決めても、自宅でじっとしていてくれる保証はない。やむを得えず自宅で待っているのだ、というメッセージが含まれているからこそ、看板を下ろしてはならない」

 全国で入院待ちの間に感染者が亡くなるケースが相次いでいる。県内では昨年12月1日〜今年1月17日、感染して死亡した226人のうち7人が自宅で亡くなったが、県担当者は「入院を待つ間に亡くなった人はいない」と説明する。

県内の「自宅待機者」は30日時点で673人。県では毎日、保健師が電話で体調を確認しているが、急変を見逃さないようにするため、待機者の自宅に看護職の派遣を決めた。健康観察アプリを使って体温や頭痛の有無などをスマートフォンで入力してもらう仕組みも整える。

 同様の取り組みは神戸市などが一足先に導入。同市は21日に県方針から転換し、無症状か軽症者は一定の条件を設けて自宅療養に切り替え、よりリスクの高い患者の入院を優先させた。

 県は引き続き、神戸市以外の保健所設置市(中核市)に方針維持を呼び掛けるが、独自の対応を余儀なくされている。

尼崎市は昨年12月、待機者の往診に協力してくれる医師に対し、患者1人当たり約1万5千円を支給する制度を創設。姫路市や西宮市も保健師や薬剤師らが巡回し、必要に応じて医師を派遣する運用を始めた。尼崎市の担当者は「現実に収容できない患者が出ている。待機者と呼ぶか、療養者と呼ぶかは別にして、対応せざるを得ない」と話す。

 県の方針堅持に対し、姫路市の担当者は「これまでの経験で30代以下の重症化事例がないのは明らか。待機者が解消しても入院させることは考えていない」ときっぱり。一方、ほとんど待機者がいない明石市は「県の方針に従う」としている。

Yahoo(神戸新聞)1/31(日) 9:00