新型コロナウイルスの影響で客足が途絶え、のれんを下ろすことも検討した「和菓子司ぽんぽんや」(泉大津市本町)が、息を吹き返した。ネット通販とステイホームをキーワードにした商品化が功を奏し、コロナ禍による経営危機を乗り越えた。今では前年同月の売り上げを上回る勢いで、「特産品として育て、泉大津の活性化に貢献していきたい」と元気いっぱいだ。

 同店は1933年の創業で、4代目の代表の川端宏子さん(58)と、和菓子の製造を任されている兄(3代目)の川端祥介さん(60)を中心に運営。看板商品の「くるみ餅」は、懐かしいふるさとの味として地元の人たちに愛されている。

 材料は、もち米、砂糖、大豆のみ。クルミは使わず、「大豆あんで餅をくるむ」ということから、くるみ餅と呼び、同店では主力商品として育ててきた。

 さらに、地元にゆかりのあるフリーアナウンサーの川田裕美さんが、出版した本やテレビ番組で、くるみ餅のことを「忘れられない味」と紹介したことから、全国的に知られるようになった。3年前には泉大津商工会議所主催の第2回OZU―1スイーツグランプリで優勝し、同市を代表するスイーツとしてのお墨付きも得た。

◇家族で手軽に
 そうした中、新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げは急減。祥介さんは「3月は彼岸の時期で、お供え用としてくるみ餅を買い求める客や、お寺参りの後、店に立ち寄る家族連れなどでにぎわっていましたが、今年は例年に比べて売り上げは半分以下。店を営業していけるか不安で、閉店も考えました」。

 このピンチに助っ人として加わったのが、コンサルタントの中村陽子さん(59)。知り合いの紹介で川端さんらと交流するようになり、3人で生き残り策を模索した。

 「緊急事態宣言後は在宅の人が増え、スーパーマーケットで、ホットケーキの素がよく売れていることにヒントを得ました。ホットケーキのように、ウチの商品を家族に手軽に作ってもらえる商品ができないかと考えました」(祥介さん)と振り返る。

 商品のイメージはできたが、新たな販売ルートの開拓が課題に。中村さんはインターネットの知識を駆使。会員制交流サイトのフェイスブックの「コロナ支援・訳あり商品情報グループ」のサイトに投稿することを思い立った。

 商品は、親子で作ることができる「お家で作ろう! わらび餅」(1袋税込み699円)。5月の連休明けからネット通販を始めると成果が表れ、発売開始から3日間で200袋近くが売れ、その後も全国各地から注文が相次いだ。

◇愛される味に
 「テイクアウト泉大津&忠岡#持ち帰り飯」のサイトにも投稿。「フェイスブックを見ました」と言って来店する地元の客も増え、くるみ餅を買い求める客や、店内でかき氷に舌鼓を打つ家族連れなどでにぎわう。完全に経営を立て直し、5月以降は前年同時期の売り上げを上回り、新商品の「くるみあん生バター」の発売も決まった。

 しかし、川端さんらはチャレンジ精神が旺盛。2人は「時代の変化に対応して、商品の在り方、販売方法などを常に再点検し、多くの人に愛される“泉州の味”を提供していきたい。商品化を通じ、地元を元気にしていくような取り組みもしていきたい」と話した。


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ネット通販でヒット商品となった「お家で作ろう! わらび餅」

大阪日日新聞 2020年8月6日
https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/200806/20200806025.html