生駒署で逮捕の様子を話す一丸彰巡査長=2018年10月17日、奈良県生駒市東松ケ丘、照井琢見撮影
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 おじいさんの息子をかたる詐欺師の一味が、金を受け取りに行くと、相手はおじいさんに扮した警察官だった――。奈良県警生駒署が先月初めに摘発した特殊詐欺事件。駐在所の巡査長がおじいさん役を「熱演」し、金の受け子の男(25)を詐欺未遂容疑で現行犯逮捕した。

 署によると、10月2日午前8時25分ごろ、生駒市の男性(80)の自宅に、息子を名乗る男から電話があった。男は「友人と一緒に株を買ったが、友人が会社から横領した金で買ったとばれた。200万円が必要だ。大阪難波駅に届けてほしい」などと説明した。

 不審に思った男性は110番通報。警察官らは容疑者に気づかれないように私服で男性宅に集まった。生駒台駐在所の一丸彰(いちまるあきら)巡査長(61)も、普段着ている上下グレーの作業着姿でかけつけた。

 その場にいた警察官の中で最年長。男性のふりをして、大阪市中央区の大阪難波駅へ行くことに。

 「さあ捕まえるぞ」と意気込んだが、80歳の男性とは年の差が20歳ほど。帽子を深くかぶって少し前かがみになり、小さい歩幅でゆっくり歩いた。

 「胸がバクバクでした」と一丸さん。息子役の男に電話する必要があったのだ。「声でばれたらどうしよう」。公衆電話で、男性をまねて息子役と話した。「いつもより声は低く、口調も歯切れよくしました」。怪しまれることなく、別の駅に行くよう指示された。

 大阪市浪速区の南海今宮戎駅に着き、駅前で待つこと10分ほど。弁護士を名乗る男が話しかけ、「息子さんと電話がつながっています」と携帯電話を渡してきた。

 息子役は「代わりに弁護士に来てもらったから、お金を渡して。あとから迎えに行くよ」。一丸さんは「わかったわかった。ほなそうしとくわ」と電話を切った。

 周囲で待機していた警察官数人がわっと男を囲み、詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕した。男のあぜんとした顔を見ながら、「ホッとしました」。

 生駒台駐在所に赴任して8年目。普段は駐在所の近くの高齢者宅を回り、防犯指導をしている。「電話でお金の話が出たら、たとえ相手がお子さんでも詐欺を疑ってください」。一丸さんは力をこめた。(照井琢見)

朝日新聞デジタル 2018年11月4日16時25分
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