安曇野市穂高有明の古田清さん(72)、春江さん(70)夫婦が飼育している「天蚕(てんさん)」の繭から生産したエメラルドグリーンの糸が、世界遺産・薬師寺(奈良市)の大講堂に掲げる「繍仏(しゅうぶつ)」の一部に使われることが決まった。一般的な黄緑色の天蚕糸に比べて青みが濃いのが特徴で、夫婦が2015年に安定生産にこぎ着けた。春江さんは「安曇野と薬師寺の新たな縁が結ばれてうれしい」と話している。

 春江さんらによると、布に阿弥陀(あみだ)如来を刺しゅうした繍仏は現在、都内で制作中。長辺9メートル、短辺6・5メートルほどで、糸は阿弥陀如来の後方から放たれる光の輪「円光(えんこう)」の一部に使われる。

 古田さん夫婦は突然変異で出現するエメラルドグリーンの繭を選別し、交配を重ねて5年がかりで安定生産に成功。その糸は昨年、「安曇野エメラルドグリーン」として商標登録された。春江さんは「多くの協力を得て繭の改良に取り組んできた。長く残る繍仏に糸が使われ光栄」と話す。

 天蚕や繍仏を広く知ってもらおうと、天蚕の普及に取り組む安曇野市内の市民団体は19日、薬師寺の別院聖光(しょうこう)寺(茅野市)の松久保秀胤(しゅういん)住職を招いた講演会を開く。国営アルプスあづみの公園堀金・穂高地区(安曇野市)で午後2時半から。公園の入園料が必要。


信濃毎日新聞 6月14日
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180614/KT180613ATI090017000.php