京都府は、住民の移動や農産物の出荷、食料品の宅配といった輸送サービスを一体的に提供する
交通システムの整備に乗り出す。

過疎地域で人と物の移動手段を確保し、高齢者をはじめ住民の生活を向上させる狙いで、
本年度中に南山城村と南丹市美山町の2カ所で試行を始める。
成功すれば、自宅から目的地までドア・ツー・ドアで結ぶ「デマンド型」の輸送と
生活支援を組み合わせた多角的な交通事業になると期待する。

過疎地域では、利用者の減少や事業者の撤退が原因で、公共交通や物流の維持が難しくなっている。
一方、住民は高齢になるほど、自分で車を運転して買い物や医療機関に行ったり
農産物を出荷したりすることが難しくなる。

政府は、過疎地域の輸送サービスを維持する目的で9月1日から、
自動車運送事業者に対し、旅客か貨物運送のどちらかに限ってきた従来の規制を緩和。
過疎地域に限って、タクシーや貸し切りバスが荷物を運び、トラックが人を運ぶ「掛け持ち」が可能になった。

■道の駅を拠点に

府は、交通システム整備を試行する地域として、
農産物の直売所を設け、住民向けの食料品や日用品も扱う道の駅が4月に開業した南山城村と、
住民出資で設立した商店「タナセン」が購買や福祉事業を展開する南丹市美山町を選んだ。

南山城村では規制緩和を踏まえタクシーの活用を予定する。
タクシーは、人の送迎に加えて、高齢者宅から道の駅に出荷用の野菜を運んだり、
道の駅で売っている食料品を高齢者宅に運んだりする。
村とJR加茂駅(木津川市)を結ぶバスの運行開始に合わせて、バスによる農産物輸送も検討している。
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道の駅の運営会社の森本健次社長は
「単に人や物を運ぶというだけではなく、お年寄りの健康や精神状態を確認するという意味もある。
 試行を機に村の交通インフラをどう構築するかを考えていきたい」と話す。

■スマホも活用

美山町では、タナセンが既に高齢者や障害者を対象に、無償で移送や宅配を行っている。

今回、住民に携帯型端末を配布し、
出荷物の売れ行きや店の商品を動画で確認し、希望する移送先や配達物を伝える仕組みを導入して
従来の輸送サービスの利便性を高め、利用者の拡大を図る。
安否確認や緊急通報などスマホを活用した高齢者支援にも乗り出す。

府は9月補正予算案に事業費500万円を計上し、可決された。

寺井豊交通政策課長は
「過疎地域は送迎や宅配を単独で行っても採算は合わない。
 一体化や効率化が事業の継続を可能にするし、農業振興や福祉の増進にも貢献できる」と強調する。

ただ、こうした交通システムを本格実施に結び付けるには、
あらゆる住民が利用できる料金設定と、事業を継続できる収益や税財源が不可欠だ。

府内では6月から京丹後市で京都丹後鉄道を使った農産物輸送も始まった。
南山城村と美山町と合わせ3地域に共通するのは、輸送のノウハウと意欲を持つ人や事業者がいる点だ。
府内にシステムが広がるかどうかは、事業の中核になる担い手の有無が鍵を握りそうだ。

以下ソース:京都新聞  2017年10月30日 08時45分
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20171030000018