日経ビジネス
2024年2月9日 2:00
日経ビジネス電子版

ある日、職場でサイボーグやミュータントが働き始めたら、あなたはどうするだろう。これは架空の話ではない。

スペイン在住の英国人ニール・ハービソン氏は、光の波長を検知するアンテナを手術で頭頂部に結合したところ、職場を追われた。スペイン人のマネル・デ・アグアス氏は、魚のヒレのような形をした気象観測装置を手術で頭の左右に取り付けたため、会社をクビになった。

身体を機械と結合させたサイボーグや、遺伝子操作で身体能力を高めたミュータントを、「ネオヒューマン」と呼ぶことにしよう。

地球に最初の生物が誕生したのは40億年前。途方もない歳月を重ねて、単細胞生物からホモ・サピエンスへと姿を変えた私たちは、ついに科学の力で生物進化の制限速度から解き放たれた。

ハービソン氏やデ・アグアス氏のように、一部の人々は一足先に次なる進化の段階へと歩み始めている。サイボーグ工学や遺伝子工学の進歩に伴って、後に続く人は増えるに違いない。

生まれながらの脳と体を維持する私たち「オールドヒューマン」は、ネオヒューマンを職場から追い出すなど、彼らを異質な存在として忌避している。このままでは、新旧の人類が対立する時代を迎えかねない。
 


頭蓋骨にアンテナを結合

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC072FZ0X00C24A2000000/