不適切ケアの法人 身寄りない入所男性に高額葬儀
2020/11/10 05:00

 不適切なケアが相次いで発覚した神戸市灘区の社会福祉法人「六甲鶴寿園」が運営する養護老人ホーム「六甲台ビラ」で、身寄りのない入所男性=当時(90)=が亡くなった際、
施設長が男性の資金を基に133万円の葬儀を出していたことが分かった。
身寄りのない入所者の葬儀としては高額で、関係者によると、葬儀社が施設長に現金のお礼をする意向を示していたという。(中部 剛)

 六甲台ビラは、経済的な理由などで自立困難な高齢者が入所する。男性の通帳などは施設が管理していた。
男性は今年7月に死亡し、施設長が喪主となって神戸市内の寺院で葬儀が営まれた。

 施設で亡くなり、身寄りがない人は施設が葬儀を執り行う。
同市の遺留品取扱要領などによると、故人が残した金銭を葬祭費に充てることが認められており、残金は相続されるなどする。
男性の場合、約300万円の遺留金があった。

 133万円の葬儀について、兵庫県内で老人ホームを運営する福祉法人役員は「考えられない」といい、
同じ六甲鶴寿園内の特別養護老人ホームで施設長をしていた男性も「そんな額の葬儀は出したことがない。神戸市指定の葬儀社による20万円程度の規格葬儀が通例」と話す。
六甲台ビラでは8月にも施設長が喪主となって45万円の葬儀を出していた。

 これらの葬儀を請け負ったのは神戸市内にある葬儀社。
関係者によると、同社の男性経営者が「本来の請求は112万円。請求費133万円との差額は施設長にお礼として渡すつもり」という趣旨の話をしていたという。

 しかし、神戸新聞社の取材に、経営者は施設長が喪主を務める葬儀を受けていたことを認めたが、差額のお礼は否定。
「今回は渡していないが、ふだんは菓子折りと電話代として1万〜2万円程度のお礼をしている。他の福祉施設も同じようにしている」と話した。

 法人の岸本圭子理事長は書面で取材に応じ、「個々のご利用者さまの希望を踏まえて葬儀を実施している。今後は疑義をなくすため、生前に意思確認した内容を書面化する」とした。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202011/sp/0013853242.shtml?pu=20201110