東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県の計42市町村の約4割に当たる17市町村が、人口の将来展望を示す地方人口ビジョンの見直しに着手したか、検討を進めていることが河北新報社の調査で分かった。間もなく震災から8年。被災地で人口減少が想定以上に進み、最新の推計とのズレが生じていることなどが理由だ。

<最新推計と開き>

 河北新報社は42市町村を対象に実施した首長アンケートで、ビジョンについて尋ねた。「改訂に着手」が改訂済みの1町を含めて10%(4市町)、「改訂を検討」は31%(13市町村)で、合わせて約4割に上った。
 宮城県南三陸町は昨年4月にビジョンを改訂。2040年の目標を9386人としていたが、15%減の8000人に引き下げた。佐藤仁町長は「ありのままの姿で推計した」と説明する。
 42市町村は大半が15年度末までにビジョンを策定し、40年時点の目標人口を試算した。ただ、国立社会保障・人口問題研究所(社人研、東京)が18年3月に公表した最新の人口推計に比べ、多くの市町村が人口減の推計を緩やかに見積もっている(グラフ)。
 石巻市の場合、ビジョンで40年の目標を約12万人と想定する一方、社人研の推計は9万7000人にとどまり、2万人以上の開きがある。

<出生率改善頼み>

 市町村、社人研とも、震災後の転出や住まい再建など短期的な人口移動については加味しており、目標と推計の開きは前提とする出生率の差が大きく影響している。
 多くの市町村は、女性1人が生涯に産む子の数・合計特殊出生率が1.43(13年)から2.07(40年)に上昇する目標を掲げる国に従い、2以上に改善する前提で推計を出している。
 社人研は「東北は出生率が上昇する傾向がほとんどみられない」として、現実に即した数値を地域ごとに適用。市町村策定のビジョンより人口減が加速する推計値となった。
 社人研の小池司朗・人口構造研究部長は「盛岡、仙台両市から遠い地域ほど落ち込みが激しい。復興後のまちづくり次第で、流入人口が増えて人口減が緩和する可能性はある」と話す。
 社人研は、原発事故避難者の帰還動向が見通せないとして、福島県内の市町村の推計は出していない。

[地方人口ビジョン]日本の人口の将来展望を示す国の長期ビジョンを参考に、都道府県と市区町村が2016年3月末までに作成。各自治体が同時にまとめる人口減少対策の5カ年計画「地方版総合戦略」の基礎資料となる。長期ビジョンは合計特殊出生率が40年に2.07程度に上昇すれば、60年に人口1億程度を維持できると想定。多くの自治体の地方人口ビジョンは国と同様の出生率向上に加え、移住者や定住者を増やすなどして人口流出を食い止めることを前提にしている。

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