05月29日 18:15 社会

 誰にでも起こりうるかもしれません。かばんに果物ナイフを入れていた男性に、倉敷簡易裁判所は29日、銃刀法違反で有罪判決を言い渡しました。
 自炊のためにナイフを持っていたと主張する男性はなぜ有罪になったのでしょうか?

 倉敷簡易裁判所を訪れたのは、岡山県倉敷市に住む69歳の会社員の男性と担当弁護士です。

(被告の69歳男性はー)
「自分の生き方っていうかそういったことを考え直す1年であったなというふうに思っています。望むのは無罪。強く希望しています」

 男性は銃刀法違反の罪に問われ、無罪を訴えていました。

(記者リポート)
「男性は倉敷市の自宅から岡山市の会社まで車で通勤していました」

 起訴状などによりますと、男性は去年5月26日、岡山市中区の市営野球場の駐車場に軽トラックを止めて休憩していたところ警察官に職務質問されました。
車の助手席に置いていたかばんの中には半年前に買った果物ナイフがありました。

 男性は警察に任意同行され取り調べを受けました。
 そして去年10月10日に、倉敷区検察庁に略式起訴され、男性には罰金10万円の略式命令の通達が届きました。

 罰金が課せられるとは思っていなかった男性は弁護士に相談。略式命令の罰金不服申し立てを行い、刑事裁判で無罪を主張してきました。

 同じような状況にあった人に話を聞くことができました。
 イノシシから身を守るためサバイバルナイフを持って山登りをしていたそうです。この男性は取り調べを受けましたが、刑事責任を問われることはありませんでした。

(同じような状況にあった男性はー)
「やりすぎだな思うし、一般的に私ら常識的に考えたらその場で状況判断したらそこまでしなくてもなぁっていう気はしますけどね」

 倉敷市の男性の裁判で1番の争点は、果物ナイフの所持に正当な理由があったかどうかです。
 銃刀法では、「業務その他正当な理由による場合を除いては、刃体の長さが6センチを超える刃物を携帯してはならない」とあります。

 被告の男性は昼は会社に勤め、夜はコンビニエンスストアで働いていました。

 有罪判決を受けた69歳の男性は、「生活が苦しくてうどんにしょうゆと水をかけて食べていた。ネギやちくわを車の中でナイフで切っていた」と、果物ナイフは生活に根付いた正当な理由だと主張しています。

 29日の判決で、倉敷簡易裁判所の大野裕之裁判官は「果物ナイフをかばんに入れて携帯していて、多くの時間、車の中で過ごしていたとしても、
車は移動して第三者に接する場所であり刃物による社会的危険性は大きい」として男性に罰金10万円の有罪判決を言い渡しました。

(有罪判決を受けた69歳男性はー)
「考えられる中で最悪の結果になって非常に残念です。果物ナイフのような生活の道具を携帯してたら、状況によっては銃刀法に触れるということを知っている人は少ないんじゃないかな、私がそうであったようにですね」

(板垣和彦 弁護士)
「市民の人たちの中にはいろんな生活サイクルの人たちがいるので、過度に法律が個人の生活に踏み込まないようにするのが正しいやり方だと思っています」
http://www.ksb.co.jp/sp/newsweb/detail/9915