【世界の街から】すり犯逮捕にびっくり
外国人被害に敏感なカイロ
2017/12/6 16:00
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(写真)
カイロのザマレク地区で、記者が財布をすられた歩道付近=11月23日(共同)


 エジプトの首都カイロに先日出張した際、不覚にも路上で財布をすられた。警察に被害を届けたが、正直なところ捜査能力を疑い、諦めていた。だが約1週間後、警察が犯人を逮捕して財布やカード類も回収したと連絡があり、とても驚いた。

 被害に遭ったのは夜。ズボンにアイスクリームをかけられたと気付くと、ティッシュを持った男が近づいてきた。ズボンの汚れに気を取られた隙に、ポケットから財布を抜き取られたようだ。
現場はナイル川の中州ザマレク地区。各国大使館が並ぶ警備厳重な地区で、5月まで1年間ここで暮らした経験から、安全と思い込んでいた。

 被害直後に警察署に届け、翌日夜にカイロを離れるまで、何度も現場に連れて行かれ、異なる警官にその都度状況を説明した。警察署では「容疑者だ」とする
無関係な男性5人に引き合わされ、別の数人の顔写真を見せられる「面通し」も。「大丈夫か」と首をかしげるばかりだった。

 しかし、事件は治安当局トップにも報告され、徹底捜査の指示が下りていたという。ザマレクは当局にとって最重点地区。エジプトは外国人頼みの観光業が低迷しており、外国人の被害に敏感になっていたのだ。

 警察は付近の防犯カメラの解析から男が逃走に使った車を割り出し、男と車の運転手を逮捕した。当初は「ザマレクでこんなすりが起きるわけがない」と被害届の受理に消極的だった警察の担当者も、
改めて経緯を聞きに行くと「今後は気を付けてね」。エジプトの警察力を少し見直した。(共同通信=イスタンブール支局・吉田昌樹)
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