http://www.asahi.com/articles/ASK9H5WV4K9HPTIL01W.html

 長い修業が必要とされてきた食の職人の世界が変わりつつある。すしは3カ月、パンは5日といった実習で次々と送り出す。
感覚に頼らず、マニュアル化の徹底で、一流店と遜色ない味が出せるという。一方、「心を学べる」と下積みの大切さを訴える声もある。

■基礎徹底反復、ミシュラン店へ

http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20171014000743_comm.jpg
「飲食人大学」大阪校の寿司マイスター専科の実習風景=大阪市福島区野田2丁目

 酢洗いしたアジ、昆布じめにしたアコウ。ネタの味わいを引き立てるのは、職人のひと手間だ。

 JR福島駅近くの江戸前すし店「鮨 千陽(すし ちはる)」(大阪市福島区)では、専門学校で3カ月の実習を受けた約10人が交代で板場に立つ。

 昼は2800円、夜は3500円と7千円のコースを提供。ミシュランガイド京都・大阪の2016、17年版に掲載された。

 「飯炊き3年、握り8年」と言われるほど、すし職人には長い修業が必要とされてきた。
だが、千陽の運営会社が開いた専門学校「飲食人大学」(同)の寿司(すし)マイスター専科は、「3カ月でも現場で通用する技術や作法が身につけられる」としている。

http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20171014000744_comm.jpg
「鮨 千陽」の板場ですしを握る職人。2人とも今春受けた実習で初めてすしを握った=大阪市福島区福島5丁目

 魚のさばき方や握り方などの基礎、包丁を入れる角度や調味料の加減などを教え、徹底的に反復させる。
3年前に開校し、約500人(東京、名古屋両校も含む)が実習を受けた。

 今春、高校を卒業し、同校を経て、7月から千陽で働く大阪府高槻市の高井虹歩(にじほ)さん(19)は、海外ですしを広めるのが目標。
「最初は魚がボロボロになったけど、わかりやすく、何度も教えてもらった」

 受講費用は60万円(3カ月、昼間コース)。
講師の星川貴浩さん(48)は「自分でお金を払うからこそ何度も失敗できる。店では失敗できない」。
自身は15歳で料理の世界へ入り、厳しい下積みを経験したが、「最短距離で夢をかなえてあげたい」と語る。

 沖縄県出身の田場壱盛(いっせい)さん(20)は、地元で江戸前すしの店を開こうと、4月から同校で実習し、7月に千陽へ。
18日目には客にすしを握った。「早く握れるようになりたかった。これからも板場での動きを学び、長年修業した職人の方にも認めてもらいたい」

■「第二の人生」夢…

残り:785文字/全文:1643文字
※公開部分はここまで
※こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。